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新体育館、自前のソファーに座り、あの日のことを思いだす赤林の顔は一目で浮かれているのがわかる緩みっぷりで。
だが、それもつかの間。赤林の座る黒いソファーへと近づく一人の男。不良高では珍しい黒い髪をもつその男は、赤林の右腕とも言える存在。
幼馴染みの林家総司(はやしやそうじ)。赤林がトップをつとめる赤の組のNo.2である。
総司の気配に気づいた赤林は長年の勘から、今日ももれなく空振りに終わったことを知り、再びその顔を絶望へと変えるのであった。
「......赤林。あのな、あー」
「あぁ、いい。今日もめぼしい情報はなしか......。ここまでくると、見つけてくれるなって言われてるようなきがすんな」
仲間たちからオカン気質なんて言われている総司に、余計な気苦労はかけたくない。そう思っての言葉だったが、自分で言いながら、こんなにも気持ちが暗くなるはなぜなのか。
そしてどうして、彼はこんなにも見つからないのか。
「あー、もう一ヶ月だよな。まじで、そう言われてんじゃねーの」
「んなわけっ!......ねぇだろ」
そう言葉で否定しながらも、そうかもしれないと思う自分もいて。
あの日、彼に助けられたあの日から、赤林は赤の組の全員を使って彼を探し始めた。手掛かりは、赤林が聞いた【西谷中】という単語と、赤林の記憶に微かに残る、綺麗な顔だけ。
だが、赤林を襲ってきた他校の不良の反応を見るに、彼は不良のなかでも名の知れた人物らしい。【西谷中】にいる不良のなかから、赤林の壊滅的に下手くそな絵を使い彼を探す。
それは案外簡単なことのように思えた。それなのに。
「なーんでこんなに見つからないんだろうな。お前のハニーちゃん」
「ハニーちゃん、言ってんじゃねぇ!」
この一ヶ月間、なんの情報もないまま季節は春を迎え。
今日は、新一年生の入学式である。
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