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「ーーはあああぁ。」
大きなため息が響き渡る、新体育館。去年の夏、建てられたばかりのそこには、今や一軒家並みの設備が整っている。
校舎を挟んで左。新体育館が建つ前に使われていた旧体育館と比べると、その外装は月とすっぽん。敗者と勝者。
その違いだけである。
そんな場所で、今現在。
人生最大といっていいほどの絶望を味わっている男がひとり。
勝者の席に座っているというのに、その表情は敗者そのもの。
いつもであれば、軽く後ろへ撫で付けてあるはずのトレードマークの赤い髪は、今や元気なさげに額へと垂れている。
「............くそっ」
口から漏れるのは、不甲斐ない自分への言葉で。こちらを気遣うような、怯えるような。そんな仲間たちの視線が今は酷く鬱陶しく思える。
あぁ、あの時こうしていれば。
あぁ、あの時ああしていれば。
後悔はつきないが、後悔など無意味だ。そう、割りきることができたらどんなに楽か。
男は、ひとり空を見上げる。
視界を狭める赤を乱暴に上へとかきあげた。
「はあああぁ。」
彼の名前は、赤林美幸(あかばやしみゆき)。
この学校の勢力を二分する、赤の組のNo.1。正真正銘、リーダーである。
そして、そんな彼は今。
所謂、恋煩いの真っ只中であった。
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