7 「あ、悪い。」 「え、......いや。」 なんだかばつの悪そうな表情をつくり、目を逸らした伊瀬に、俺の方が悪いことをしたような気分になる。たまらず、顔を伏せた。 俺はただ、手を振り払っただけなのに。 そう心のなかで思いつつも、それだけではないと思う、俺もいて。 「えっと......。」 なにかを話さなければという使命感に駆られて、口を開く。 大嫌いでムカつくやつと二人きり。そんな状況で出てきたのは、なんの意味ももたないただの音だけ。 というか、この状況でなにを話せば。 俺たちに共通に話題なんかないだろうし。 そもそも、伊瀬にここで見つかる予定なんかなかったのに。俺のバカ。 後ろから、こっそり伊瀬を観察するはずだったのにっ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |