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うおっー。
初めて知った。『菫』にそんな意味があったとは!
「じゃあ、伊瀬は誠実で謙虚ってこと?」
新しいことを知って、浮かれる心をそのままに、伊瀬の横顔に聞いてみる。
てっきり、その答えは。クラスメイトが聞いたときと同じように、控えめな笑顔と否定の言葉だと思ったのに。
「ーー誠実で謙虚ね。」
「っ......!」
初めてみる顔だった。
背筋がピン、としてゾクリと震えた。
だけど、これを気づかれちゃいけない。なぜかそう思って。
「あ、伊瀬! 俺、これから用事あるからもう帰るな
っ。」
それだけ伝えて走り出す。
後ろで名前を呼ばれた気がしたけど、振り向かずにそのまま走った。
だけど、何かを忘れているような気がして。
「あっ。」
家に帰ってから気づいたのがいけなかったのか。学校までの道を歩く、伊瀬に見つかってしまうまで後5分ちょっと。
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