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「はあ。」
伊瀬の、なぜか楽しそうな笑顔を見ていたらこれ以上この話題に触れるのは面倒になってきて。
まぁ、いいや。
そう思いつつ、伊瀬の隣を歩く。
「それで。なに買ったんだよ、本屋で。俺に授業サボらせて漫画とかだったら許さねぇからな!」
「あー、漫画じゃない。ていうか。南条昨日、午前中サボってたよな。」
「うっさい! 人にサボらされんのと自分でサボるのは違うんだよっ。」
「......はいはい。」
きぃー!
なんだ、こいつ。伊瀬ってこんなにムカつくやつだったっけ。
女の子としゃべる伊瀬は、こう。もっとこう、優しくて、......なんだっけ。
せい、せいなんとか。せいじゅく、じゃなくて。せいじん、じゃなくて。えっーと、
「ほら、これ。」
「ぇ、」
伊瀬の横顔を観察しながら、頭を悩ませる俺にビニール音。
カシャカシャと揺れる袋から出てきたのは、『菫』と大きく書かれた分厚い本。その帯に小さく書かれている言葉に、
「あーっ!」
さっき出なかった言葉を思い出す。
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