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「ありがとうございました。またお願いいたします。」
若干早口な店員さんの言葉を聞きながら、袋をぶら下げ前を歩く背中を追って店外へ。
学校から近い、本屋のまえ。平日の午後、やはり人はあまりいなくて。
......、っていうか。
「ん。南条、どうした?」
「どうしたじゃねぇよ! なんでっ、俺はっ、こんなところにいるんだ!」
「なんでって。ついてきたからだろ、俺に。」
「ついてきてねぇよ! あれは拉致っていうんだ! このばか力!」
強く握られて、引きずられた腕がまだ痛い。
伊瀬がこんな強引で乱暴なやつだったとは思わなかった。
うわっ、もー。腕赤くなってるし。
微妙に痛みの残る腕をすりすりしながら伊瀬を睨めば、伊瀬はほんの少し目を見開いて、
「あー、悪い。」
目尻を下げながら、そう笑う。
............こいつ。絶対悪いと思ってないよな。
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