6
そんな、よく分からない気持ちを抱きながら、伊瀬を見つめる。
また顔が赤くなっているような、そんな気がして、恥ずかしさに顔を伏せようと、膝を折り畳んだ瞬間。
ちゅっ。
「へ。」
目の前にドアップの伊瀬のかお。
と、思ったら。
その顔はまた離れていって。
「南条。」
唇に、優しい感触。
「っん......! ん、んっ。」
ちょ、なに。
「ん、......い、んっ。」
「っ、南条。」
えーっ、ちょ。なに、なに、なに。
舌がーっ!
「かわいい、南条。」
「や。んっ、はぁ、............いせ。」
顎に二人の唾液が伝う。
俺はいったい何を。
「伊瀬っ。なにしてんだよっ。」
「なにって。キス。」
「......な。んなことしってるよ! だから、なんで今
キスなんかっ。」
あー、くそっ。
口の周りがべとべとじゃん。
「もっ、いせっ! やめ、」
「さっきの話に戻るけど。俺、佐藤とは別れるから。」
「え?」
思わず動きをとめて、伊瀬を凝視する。別れるって、そりゃうれしいけど、でも、なんか。
「俺は別に佐藤のこと好きなじゃなかったし。付き合ってって言われたから付き合ってただけ。」
「え、でも......。」
「俺が好きなのは南条だから。だから、な。」
「ぇ、......んぅ、っ。」
苦しさに、伊瀬のブラザーを強く握る。
唇から離れると、今度は耳元でリップ音。
「い、せ。」
「遥。愛してる。」
そんな言葉とともに、伊瀬は小さく上品に笑った。
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