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「え......。」
なんだって?
伊瀬が、俺をすき?
そんなことって......。
いやっ、まてまて!
よく考えろ、俺。
あの日だって伊瀬は、さらーっと。もう、何でもないように俺が好きだと言ったじゃないか。
そう、人間として。にんげんとして。
「なぁ、伊瀬。」
「ん?」
俺と視線を合わせるように、首を傾げた伊瀬へどきり、と胸がなる。
それを誤魔化すように、右手に触れる布を、ぎゅっと強く握った。怖くて、うつ向く。
「あの、伊瀬......。お前は俺がにんげんとして好きって言ってくれたけど、俺は違う。俺は、お前が好きなんだ。男として、お前が好きなんだよ。それに、無理しないくていいよ。俺、お前に最悪なこといっぱいしたし、俺を嫌いになっても仕方ない、から。」
自分で言いながら悲しくなって、また目が熱くなる。
頬に熱いものが伝う感覚。
あー、もう嫌だ。
俺、いつの間にこんなに泣き虫になったんだろう。
「だ、から、いせ。言いたいこと、いってくれて、いいからっ。だからっ......。」
うつ向いたまま、もごもごと言葉を発する。
そうだ。さっさと言ってくれ。
俺が嫌いになったって。
ムカつくって。
もう、話しかけないって。
そしたら、俺。
おれは。
「南条。」
呼ばれた名前と一緒に、顔を上げる。
そこには、初めてみる伊瀬の表情。
それに。
あぁ、俺はまだこいつのことを何も知らないと。
そう、自覚させられるような真剣な顔。
「南条。よく聞けよ。」
「え。」
発せられた言葉に戸惑う。いったい、なに。
「俺の言いたいこと。これから言うからちゃんと聞け。勝手に自分で決めつけんな。いいな?」
「え、あ。......うん、うんっ。」
いつにも増して真剣なその表情に、自然と頷く。
あぁ、これが当たってくだけるってやつなのかなぁ。と頭の隅っこでぼんやり考えた。
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