罪悪感
「つぅ。」
「あ、あ。......いせ。」
目の前で顔を歪める伊瀬の名前を呼ぶ。
その声は情けなく、震えていた。
「いせ。」
もう一度、名前を呼ぶ。
彼は、廊下の床で打ったであろう腰をさするのをやめ、真っ直ぐな瞳を俺に向ける。
「どうした? そんな顔しなくても、俺は大丈夫だぞ。それよりお前は? どこか捻ったりしてないか?」
「え、あの。俺は、大丈夫だけど。」
どう考えても悪いほうの俺を心配して、眉を下げる伊瀬へどうしようもない気持ちがわく。
そろそろ立とうと、彼の膝の上で向き合う形になっていた俺へ、彼の手が伸びる。
俺はあふれでる気持ちをそのままに、その手を下に引っ張った。
俺をそんな優しい目で見るな。
俺にそんな、心配そうな顔を向けるな。
俺にそんな笑顔を見せるな。
俺みたいなやつに、簡単に騙されるなよっ。
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