家で
***
「あー、そこら辺適当に座って。」
部屋に散らばる雑誌を蹴りつけながら、伊瀬を見る。
俺の部屋の様子に一瞬、固まった彼は、この現状をどう受け止めたのか、なぜか俺に向け同情の眼差しを送ってくる。
「いや、俺。片付けられない病とかじゃないから。」
「......そうか。」
お前、それ絶対納得してないだろ。
「んじゃ、俺何か飲みもん取ってくるね。」
伊瀬が座るスペースを見つけ、腰を落ち着かせたのを確認してから声をかける。
伊瀬とふたりっきりという状況への緊張で、笑顔がぎこちなくなってしまったのはご愛嬌だ。きっと、伊瀬にはバレていない。
バレていないと思いたい。
と。
「あぁ、さんきゅ。」
「っ......!!」
彼が俺に向かって笑う。
「え、あ、いやっ。じゃあ、待っててよ!」
取り合えず早くこの場所から逃げ出したい感情に支配され、部屋のドアを開ける。
徐々に狭まっていく隙間のなかで、彼はもう俺を見てはいなかった。
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