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どうしたいのか、と言われましても。
「まぁ、とりあえず。あんたが伊瀬くんにした意地悪の数々のことは、黙っておいた方がいいんじゃないかしら。仲良くなるにしても、初めから嫌われたんじゃ元もこもないわけだし。」
「え、でもそれじゃあ。」
俺は伊瀬を騙してることにならないか?
「あんたが彼に嫌われたいって言うんなら止めないけど? だいたい男同士の恋なんて、あんたの言った通り不毛よ? 伊瀬くんがどんな性癖をもってるかなんて知らないけど、彼女だっているわけでしょ。あたしあの女だいっ嫌いだけど。友達ポジションくらいゲットしといた方がいいんじゃない?」
「......友達?」
「そう。伊瀬くん、転校してきて3週間経つけど、まだ友達ってほどに仲良い男子いないみたいだし。」
「うん! 俺、がんばってみる!」
そうだ。
まずは友達から距離を縮めよう。
伊瀬は俺のこと、人間として普通に好きっていってくれたんだし。
「なんだよ、遥。お前、さっきまではそんなわけないっ、て否定してたくせに切り替えはえーな。」
ソファーから立ち上がり、どこか不機嫌そうに顔を覗きこんでくる彰へと、視線を合わせる。
「まぁねっ。俺、あいつが好きって気づいちゃったから。」
そう。気づいてしまったものは、今更どうしようもない。
自分の心に嘘をつくのは、きっと、苦しくて辛いことだから。
「よしっ! 明日、伊勢を家に誘ってみよっ。そこで仲良くなって、俺はあいつの友達になるっ。」
「うん。遥のそういう素直でおバカなところ、あたし結構好きよ。」
それは、褒められてるのか。
「まぁ、がんばれ。そして、あたって砕けてこい。」
最後、適当としか思えない彰の声援を受けながら、明日の学校に思いを馳せる。
俺は上手くやれるだろうか。
例え、上手くいかなくても、きっと。
俺は、たぶん伊勢が好きだ。
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