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あれ、でも。


「俺、リカちゃんのこと好きだっけど、こんなこと全然」

「んー、それはたぶん好きじゃなかったのよ。いや、好きじゃないというか恋じゃなかったの方が正しいかしらね。」

「恋じゃ、ない。」


そうなのだろうか。

あれは恋じゃなかったのか。


「うわーんっ。みさきーっ。」

「はい、はい。ほんと手のかかる子ねぇ。こんなことに気づかないなんて。」

「だってー、俺、男だもんっ。あいつも男だしー。」


そうだ。
言いながら気づく。

俺は男でありながら、男に恋をしたということになるんじゃないのか。

だって、伊瀬は男で、俺も男で。
それなのに、伊瀬にはリカちゃんという素晴らしい彼女もいて。


これはまさしく、


「不毛な恋。」

「なぁにが、不毛な恋だよ! てめぇ、伊瀬が転校してきてからおかしいと思ってたら、あいつになんか陰険な嫌がらせでもしてんだろっ。彼女とられたぐらいでなんだ! 俺がそういうの嫌いって知ってて黙ってやがったな、おいっ。」


気づいたばかりの恋心に、早くもブルーになる俺へと投げかけられた声に肩が跳ねる。
声の聞こえた方へおそるおそる振り向けば、予想通りどこか怒っているような険しい表情を浮かべた彰の姿。



「え、あ、いや。......まぁ。」

「まぁ、ってなんだよ。まぁ、って。」


曖昧な俺の返事が不満なのか、若干興奮した様子で詰め寄ってくる彰に冷や汗がでる。

我関せずで、俺から離れていった美咲をじと目で見ながら、一歩、足を後ろに引いたところで。



「あっ。」


重要なことに気づく。


「彰。」

「あ?」

「なんで俺が伊瀬に悪いことしたってわかったわけ?」

俺は伊瀬の名前なんか出してないのに。美咲もなんか知ってるみたいだし。

「は? なに言ってんだよ。さっき自分で言っただろ。」

「え。」

「リカちゃん。お前の彼女が転校してきた伊瀬にそっこう落とされたのはみんな知ってるだろ。」

「あー。」


彰の言い分になんとも言えない気持ちになる。
ついさっきまでリカちゃんのことは普通に好きだったのに、なんかもう。もやもや、もやもやするし。



「よし、よーし。まぁ、とりあえずそれは置いといて。」

「置くのかよっ!」

「置くのよ。バカ彰。」

「バ............、ちっ。」

「で、......遥。結局あんたはどうしたいの?」

「へ?」

いきなりの核心に迫る質問に、たじろぐ。ふてくされ、そっぽを向いた彰を視界に捉えつつ、頭を働かせる。




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あきゅろす。
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