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「まぁ、冗談言うのもそれくらいにして。」
冗談だったのか。
「あんたそれ、大前提が間違ってると思うわよ。あたし。」
「え? だいぜんてい?」
ふん、と鼻息荒く吐き捨てられた言葉に疑問が口をつく。
「もー、あんたねぇ。」
美咲の言いたいことが全く分からず、首を傾げる俺に呆れた笑みを見せ、美咲はそのまま言葉をつづけた。
「だから、要するに。あんたはその"大嫌い"なやつのことが、"好き"ってことよ。」
「は?」
俺が
伊勢のことを
好き?
「いやいやいや。そんなのありえな」
「なんでそう思うの?」
微かに開いた隙間に入り込むような、鋭い声。それに驚き顔を上げれば、真っ直ぐに俺を見つめる美咲の鋭い目。
誤魔化しは許さない。
そう語っている真っ直ぐな目に、俺はごくりと唾を飲み込んだ。
「だ、だって。俺は最初から、あいつが嫌いだったし。あいつが、俺のリカちゃんをっ! 悪いこともしたし。イヤなこともたぶん色々したしっ。......あんな表情するなんて、おもわなくて。......だから、おれっ。」
だから、俺は。
「きらわれたくない。」
伊瀬に嫌われたくない。
それよか、もっと仲良くなりたくて。
今まで悪いことしてきたけど、大嫌いだったけど。
もっと傍に近づきたくて、話したくて。
目が合うと胸が高鳴ったり、笑顔を見るとこっちの方が嬉しくなったり。
楽しそうに話してる相手に、イライラしたり。
そう思うのが好きってことなら。
きっと、俺は伊勢が好きだ。
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