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「南条。」
「......伊瀬。」
目があう。
心臓が、どきりと音をたてた。
「おはよう。」
「え、あぁ、うん。おはよう。」
って。いや、待てまて。
おはようっ、て。
今、二時間目終わったよねっ。
重役出勤ですか。
なんて、心のなかでつっこむ間にも、伊瀬は自分の席へと歩きだす。
思わずその背中を目で追うも、すぐ傍から聞こえてきた騒がしい声へ通路を邪魔された。
「えぇー、なんだなんだ。お前ら今日も挨拶だけか。あの日、からずっとだよな。お前も嫌そうじゃないし。......やっぱあの日、なんかあったんだろ。なぜか一緒に教室帰ってきたし。」
あの日の思い出を掘り返す彰に、殺意を覚える。
だけど、ただ挨拶を交わすだけの関係を1週間も続けていることに、戸惑っているのは俺も同じで。
いったい伊瀬は何を思って、俺なんかに声をかけてくるんだろう。
あの日、少しだけ話したから。
日本人がよくやる社交なんとかっ、てやつなのか。
そう、色々と考えてみるも、声をかけられたら、なぜか無視はできなくて。
「ちょっと、聞いてんのかよ? 遥くーん!」
鼓膜に直接響くような大声に思考が中断される。
なんか、最近こんなことばっかりだ。
「あーもーっ! うっせーなっ! 聞いてるよっ。普通になにもなかったしっ。前からずっと言ってるじゃん。」
「えー、ほんとか? だってお前、あんなにあいつのこときら」
「あーっ! ばかっ、ばかっ! 声がおっきい。」
続けて言葉を発しようとする口を慌てて塞ぐ。そういうことを話す時は小声で話すのが普通だろ。
お前には常識ってものがないのかよ。
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