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「あ、悪い。」
「え、......いや。」
なんだかばつの悪そうな表情をつくり、目を逸らした伊瀬に、俺の方が悪いことをしたような気分になる。たまらず、顔を伏せた。
俺はただ、手を振り払っただけなのに。
そう心のなかで思いつつも、それだけではないと思う、俺もいて。
「えっと......。」
なにかを話さなければという使命感に駆られて、口を開く。
大嫌いでムカつくやつと二人きり。そんな状況で出てきたのは、なんの意味ももたないただの音だけ。
というか、この状況でなにを話せば。
俺たちに共通に話題なんかないだろうし。
そもそも、伊瀬にここで見つかる予定なんかなかったのに。俺のバカ。
後ろから、こっそり伊瀬を観察するはずだったのにっ。
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