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無くしたもの
05 緑間と歩く











「み、ど、り、ま、」
「帰れ」
「まじか」







廊下を歩いていると、前方から緑色のよく知った顔が歩いてくるのを発見。思わず笑顔で声をかけると真顔でばっさりと切り捨てられた。相変わらず冷たい。







「今日のラッキーアイテムは?」
「ルンバなのだよ」
「え」
「今は教室で掃除をしている」
「便利だね」








ルンバ?ルンバを学校に持ってきたの?相変わらず頭おかしいな、勉強はできるくせに。






「ちなみに今日の俺とお前は相性が悪い。お互い距離を置いたほうがいいのだよ。」
「…ひどい、私を捨てるのね」
「引き取った覚えはないのだよ」
「ですよね」





メガネのブリッジを指で押しながら緑間は恋人に別れを告げる様に言う。むくれながら冗談でそう言えば手に持っていた教科書で頭を軽く叩かれた。何気に痛い。「それはそうと」と緑間。はい、なんでしょう。







「赤司と帰ったようだな」
「え、なんで知ってるの?」






隣を通り過ぎながら話し出す緑間に駆け寄って隣に並ぶ。じと、と顔を見られる。身長差のせいか見下されているように感じるがそんなことを言ったら大体の人がそうなるだろう。中1にして170p越え。じっと見返せば眉をひそめ、視線を前に向けた。勝った。







「クラスの女子が話していた」
「へ、なんで?そんな話すことある?」
「オレは興味がないが、赤司に好意を抱いている人間は少なくないのだよ」
「ほお」
「………」
「……つまり?」
「……お前は本当に…」
「え」





赤司くんが人気というか、人望が厚いことはもちろん知ってる。でもそれなら緑間だって黄瀬だって同じだ。足を止めて呆れたように見てくる緑間にわたしも足を止める。あ、頭か?また頭を叩くのか?そう思って頭を腕で守れば「何をしている」とため息をつく。

ため息つきすぎだ。







「赤司くんとはたまたま一緒になっただけだし、変なことは何もないし」
「それが通用しない人間もいるだろう」
「うーん…そうかね」
「背後に気をつける事だな」
「…刺される?」
「絶対にないと言うわけではないのだよ」





ふん、と鼻で笑う彼の背中を軽く小突けばまた教科書で頭を軽く叩かれる。身長高いからって調子に乗るな。





「おう、緑間。に何やってんだ柴田」
「青峰か」
「おう、ガングロ黒峰」
「殴るぞ」
「いて、もう殴ってるよね」






いつの間にか背後に来ていたらしいガングロクロスケこと青峰。ガングロクロスケって言い始めたのはさつきちゃんなんだけどね、語呂が良くて気に入ったわたしはよくそう呼んでしまう。呼ぶたびに殴られるけど。

頭に落とされた青峰の腕を掴んでおろせば「そうだ、」と青峰が緑間を見て口を開く。
どうやら緑間に用があったらしい。








「お前の野放しにされたルンバ、先生が没収してたぞ。職員室に取りに来いって」


「ぶ、ぶふっ、いて!」
「…………今日、オレとお前の相性が悪いのは間違いではなかったようだな」







吹き出したわたしにしっかりと鉄拳を加え、緑間は職員室に向かって歩き出す。
いや、これは教室にルンバを野放しにした緑間が悪いと思う。




「あ、ありがと」
「なにがだ」
「えと、みんなといてどうこうって考えるより楽しくて一緒にいるだけだから。緑間とかも気にしないでよ」
「…なんのことかわからないのだよ」




そうメガネのブリッジを指で押しながら顔を逸らす。足音を立てて去っていく緑間の背中を、にやにやと笑う青峰の脇腹に肘を入れつつを見送った。





















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