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無くしたもの
32 誰一人マジメじゃない




「ちょっと紫原動かないでよ」
「まじつまんねーって何が楽しいのこれー」
「紫原くん背筋伸ばしてもらえますか」
「あ、また動く!もう!」
「ねみー、しばちんお菓子はー?」
「柴田さん彼にお菓子を、じゃないと止まってくれません」
「こっちはモデルになってんだからさー、それなりの物を用意してくれないとねー」
「さっき!!全部!!食べただろ!!!」






思わずイーゼルをひっくり返しそうになった。危ない危ない。


ただいま3限目、お昼前の最後の授業は美術である。先生の「二人組になってー」という声とともにわたしの前に現れたのが黒子と紫原だ。え、まさかの3人?手に負えない。
そう思って先生に助けを求めれば「奇数になるから仕方ない」とばっさりと切り捨てられた。やだよ絶対疲れるじゃん。

そうため息をこぼせば「どうせ組む人いないから文句を言うな」と紫原に傷をえぐられた。アッ、ハイ。
誘ってくれてありがとうございます。



今日の課題は人物画だ。
三人でローテーションでモデルをする。
はじめはひどくお腹を空かせているらしい紫原。しかし本当に目の前に座る紫色の彼は落ち着きがない。
仕方なく泣く泣くカバンを漁ってみれば隅の方にまいう棒がはいってた。命拾いしたな。
それを彼に与えれば黙ってかじり始めた。
そのままじっとしててくれ。



「……(カリカリカリカリ)」
「……(ガリガリガリガリ)」
「……(サクサクサクサク)」


「……柴田さんどうです?」
「……我ながらうまくかけたと思う」
「見せてください」
「はい、久しぶりに集中したー」
「柴田さん、これは紫原くんじゃなくてまいう棒です」
「ちょっと待って、しばちん何書いたの?」
「紫原まいう棒みたいなもんじゃん。長いし紫色だし。顔もちゃんと書いたよ」
「パッケージだけやたら丁寧に書いてありますね」
「しばちんなんなのー?まじバカなの?」
「アッ、頭が割れます」




だって動くんだもん。だから諦めて紫原の適当な顔に身体はまいう棒にしてやった。
どこのゆるキャラ?
しかし気に食わなかったようで馬鹿でかい手で頭を鷲掴みにされた。こわい。




「黒子は?」
「描けましたよ。動くから苦労しました」
「おっ、いいじゃん。黒子絵とか得意?」
「まあ、頑張りましたね」
「ねーそれ◯ンスターズユニバーシティの紫の毛むくじゃらのアレ。お前ら二人ともヒネリ潰す」
「ぐふっ」
「黒子が殺られた」











「次のモデルは黒子ね」
「はい、かっこよく描いてください」
「なに?聞こえない」
「黒ちんどこにいんのー?見えないから描けないんだけどー」
「なるほど、これはイラっとしますね」
「さて描くぞー」








「……(カリカリカリカリ)」
「……(ガリガリガリガリ)」
「………」
「………紫原」
「……なにー」
「黒子がピクリともしない」
「死んだのかなー」
「勝手に殺さないでください」




生きてたようだ。








「よし、描けた」
「見せて見せて〜」
「はい」
「あーなるほどー、特徴捉えてんじゃん」
「どんな感じですか?」
「はい、あー肩疲れた」
「……なんでザリガニが書いてあるんですか?」
「あ、それ青峰」
「え」
「黒子はこっち」
「…………ちっちゃくないですか」
「青峰からの黒子。これこそミスディレクション」
「しばちんすげーさすがバカ」
「やめろやい照れるだろ」
「よっ、バカ大将〜」
「(疲れる)」





「そういう紫原はどーよ」
「オレー?はーい」
「おい白紙じゃねーか」
「さっきガリガリ言ってませんでした?」
「心の綺麗な人にしか見えないんだよー」
「あーここだわ、ここにかいてあるわ黒子」
「しばちん見えたー?上手くねー?」
「いやーすごいわー画家になれば?」
「考えとく〜」
「(なんなんだこの人たちは)」











「最後はどこのブスですか?」
「黒ちんこのブスー」
「先生、お腹痛いんで保健室いっていいですか?」







手を挙げて質問すれば「あんなに元気だったじゃない、ダメよ」となんの迷いもなく言われた。くそ、仮にも女の子だぞ。











「さすがに2人目となると疲れますね」
「黒ちんかけたのー?」
「はい、まあこんなもんでしょうね」
「え?こんなもんって何?」
「みせてよー」
「はい、どうぞ」
「黒ちんすげーじゃん」
「え、みたい。……おい、それ誰だよ」
「あれ?違いましたか?」
「それ私のうしろにいる中澤くんだよ。男だよそれ、わたしそんなゴリゴリしてないでしょ?Look at me」
「しばちん英語発音悪すぎー。授業ちゃんと聞いてんの?」
「え、すみません」








「紫原くんのも見たいです」
「ん、いーよーはい」
「………えっ、誰なのこれは」
「しばちん」
「うそだ」
「整形後ー」
「は?」
「まず目頭切開して目を大きくしてー、鼻はまあ低くはないからすこしプロテーゼいれる程度にして、あの涙袋もぶち込んで、まああとは胸だよね。多分この先も成長は見込めないから何ccか入れて完了。あ、あとはウエストと足の脂肪を抜くくらいかなー」
「紫原くん、柴田さんが息をしてません」
「え、死んだのー?」
「…整形したらこうなるのか…ふうん…」
「同窓会で会った柴田さんの顔が変わってたらキミのせいですよ」









「じゃ、もう鐘鳴るから裏に名前とタイトル書いて提出してねー」

「「「え」」」









モデル:紫原敦

黒子テツヤ作 題名【モンスター】
柴田 ゆう 作 題名【成れの果て】









モデル:黒子テツヤ


紫原敦 作 題名【fairy】
柴田ゆう 作 題名 【ミスディレクション】









モデル:柴田 ゆう


紫原敦 作 題名【闇に落ちた女】
黒子テツヤ 作 【彼女越しの中澤くん】










結果、放課後に三人揃って呼び出され反省文を居残りで書かされた。
部活に遅れたため赤司くんにも怒られた。

先生より怖かった。







もうすぐクラス替え。


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