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無くしたもの
23 紫原が妬く





「……で、…なんスよ……そんで…」
「………」
「………あれ?柴田っち?」
「………」
「………」
「………はっ」
「寝てたっスね」
「寝てたみたいですね」





昼放課後の授業を終え、この一番眠たい時間帯にわたしは机で船を漕いでいた。
隣を見れば片肘付いて眠る黒子、後ろを見れば机に突っ伏して眠る紫原。
……部活がハードすぎて授業に支障をきたしてるけどいいのか。
まあ、黒子も紫原も勉強は苦手ではないみたいだし問題はバカ峰、おっと失礼。青峰だけか。まあそんな彼も赤司くんや緑間の手にかかればちょちょいのちょいだろう。



うとうととする私の前に現れたのが金髪の彼、黄瀬だ。太陽の光に反射する彼の金髪は、今は目に優しくない。


前の席の椅子にまたがり座ってわたしに語りかける。空返事をするわたしを気にも留めず、彼は言葉を投げかける。
ふわふわとする頭で黄瀬の会話に対応しようとしたが、眠気には勝てまい。どうやら知らない間に夢の世界へ旅立っていたらしいわたしを黄瀬が笑いながら見る。

黄瀬の手が頭に置かれたのを感じ、次には優しく撫でられる。ひどく心地いい。
青峰や紫原とはまた違う、優しい手つきだ。





「最近疲れてるっスね」
「…慣れないことしてるからかな」
「帰りも中々会えないし」
「わたしも黄瀬と帰りたいよ」
「今日は待ってるっスよ」



え、いいの?目を開いて目の前にいる黄瀬に問いかければ「今日は居残りっス!授業中寝てたら課題でたんで!」眩しいくらいの笑顔で言われた。
それは笑顔で言うことじゃないよ。

バスケ部に入部してからと言うもののわたしの楽しみであった黄瀬と帰る事がなかなか出来なくなっている。
彼は学業の傍らモデルもやっているわけで、なかなかタイミングも合わないから最近は本当に寂しさを感じずにはいられなかった。
だから彼からのお誘いは受けないわけがなくて、あまりの嬉しさに眠気が飛んだ。

本当に自分黄瀬大好きだな。
目を輝かせるわたしの頭をさっきとは打って変わって、わしわしとかき乱す黄瀬。子供扱いしてるでしょ、とジト目で彼を見れば「ばれた?」といたずらに笑う。
髪を整えていればまじまじとわたしを見る黄瀬。





「なに?」
「柴田っち、髪意外と長いっスね」
「伸びたのかな」
「なかなかサラサラだし」
「そうかなー」




ま、髪は染めてないから傷みはしないかな。わたしの髪を取って触る顔を綻ばせる彼。楽しいのか、それは。

そんな会話をしていると授業開始の鐘が鳴り、黄瀬が慌てて立ち上がる。「やべ、また帰り連絡するっス!」と慌ただしく教室を飛び出していく彼を見送り、今度こそ寝ようと机につっ伏せば机の隣に立つ人物に気づく。





「…どうした、もう鳴ったよ」
「……しばちんさあ」


そこに立っていたのは紫原。彼の顔を見ればなんというか、あまり機嫌は良くないらしい。きみさっきまで寝てなかったっけ?

目を瞬かせて見上げれば眉にしわを寄せた彼の視線とぶつかる。こわっ。





「付き合ってんのー?」
「だれと?」
「…さっきのチャラそうな金髪と」
「え」



チャラそうな金髪とは、考えなくてもわかる。どうやら黄瀬のことらしい。



「いや、付き合ってな、」
「似合ってないからー」
「いやだから」
「そんないい男と付き合っても多分すぐ捨てられるってー、だってしばちんブスだし」
「おい」
「否定できないくせに〜」



なんだなんだ、話を聞かない紫原に目を丸くすれば彼は「そんだけ、」と踵を返して席に戻っていった。
はあ?その姿を目で見送れば再び背を丸くして机に突っ伏す。………ブスだと…。





「黄瀬くんはかっこいいですから。紫原くんがああ言うのも仕方ないです」
「…たしかにわたし可愛くはないけども」
「…そういうことでは無いと思いますけど」



どういうことよ、てゆうか何時から起きてた。「黄瀬くんの声で起きました」なるほど、彼はテンション上がると本当にやかましいからね。ごめんね、と一言侘びを入れれば「いいえ」と無表情で答えた。







それから始まった授業も私たち3人は爆睡。
なぜかわたし一人起こされお叱りを受けた。
納得がいかない。







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