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無くしたもの
15 キセキと戯れる






「しばちーん」
「…………ぐふっ…!」
「こら紫原、昨日遅くまでもてなしてくれたのは柴田だ。ゆっくりさせてやれ」
「…え、ぇえ……?…おも…」






深い眠りから一転、お腹にとんでもない重みを感じて薄く目を開けば太陽の光が目に直撃。目が痛い…!
その次に私の上にもたれるように携帯をいじる紫の頭を見つける。……重いわけだよ。


わたしを気遣う声はきっと赤司くんだろう。
制止を聞かずに「んー?そうだっけ?」とあっけらかんと言う紫原は相変わらずと言うかなんというか。
とりあえず重いからどいてくれ。
ふと、視線を横にずらせば隣で眠っている水色の頭の少年に心臓が跳ねた。




「…あれ…わたし布団で寝てたっけ…」




なんで黒子が隣に…て言うかここ布団じゃん。雑魚寝したと思うんだけどな、わたし。身体も別に痛くなるわけじゃないし、毛布もあったし。
ソファーを見れば掛け布団だけが残されていて、寝ていた青峰の姿はなかった。珍しい、彼が起きてるのか。


ゆっくりと起き上がればわたしに身体を預けていた紫原がこちらを見やる。
「あれー起きてんじゃん」君に起こされたんだけど。




「って、学校は?」



慌てて時計を見やればいつもの時間より大分オーバーしてる。…ぇええやばいじゃん…!なんでそんなのほほんとしてんの?今から行っても遅刻だからねこれ!慌てて立ち上がろうとすればシャワーを浴びてきたらしい緑間が赤司くんに語りかけ、私の姿を捉える。





「柴田、シャワーを借りたぞ…って何をしているのだよ」
「が、学校は?ごめんわたし目覚ましセットし忘れてて!赤司くんと緑間の成績に響いたら…!!恐れ多い…!」
「おい、オレたちはいーのかよ」
「いや、青峰はもうすでに手遅れ…黒子に至ってはまだ寝てるし!」




のっそりと姿を現した青峰はまだ寝巻きのままである。早く着替えろ。
さつきちゃんは?と聞けば「まだ寝てる」と。嘘でしょ?
わたしのせいでオール5の赤司くんや緑間の成績に傷がつくとか耐えられないよ。



「柴田」
「着替えてくる!」
「そうか」
「な、おい!柴田!赤司…!?」



赤司くんの呼びかけを流してリビングを飛び出す。うわぁあなんで赤司くんまであんなに落ち着いているのか。






「…赤司が楽しそうなのだよ」
「ああ、昨日は随分と楽しませてもらった。今も可笑しくてしょうがないよ」
「てか、しばちん何やってんのー?」
「あいつ学校いくのかよ、バカだな」




胸元のリボンに結びながら慌ててリビングに戻れば青峰が私を見て吹き出す。…このやろう、何が可笑しい。寝癖でもついてるのだろうか。慌てて髪を手で梳かすがあいにく私は直毛なため、寝癖もなかった。

え、なんだよ。にやにやしないでよ。




「…着替えないの?」
「柴田は着替えるのが早いな」
「着替える必要などないのだよ」




ん?なんで?何を言ってるんだこの子たち。まさかサボる気だろうか。ジト目で睨めば「いや怖くねーから」と青峰。うるさい。
そう口を開くよりも先に、歩いてきた赤司くんによって目の前に携帯の画面を突きつけられる。





「…なに?」
「言い忘れてたが、今日は大雪警報で学校は休校だ」
「…え、ぇえ…?」





携帯の画面から赤司くんに目を移せば、今まで見たことないような微笑みでわたしを見下ろしている。…わたしがひとり慌ててるのを楽しんでたな、って全員グルか。
寝てる黒子とさつきちゃん以外。




「しばちん寝ぼけてんのー?」
「…寝ぼけてはない、恥はかいた」
「見てるこっちも恥ずかしかったし」
「な、なんと…」
「赤司が楽しそうだったからほっといたわ」
「このガングロめ」



青峰の脇腹に一発肘を入れてやれば思ったほどダメージは無かったらしい。けろりとやり返された。女の子にやることじゃないぞ…。

じろりと赤司くんを見ればそれはそれは涼しい顔をして口角を上げていた。




「…そういえば私いつから布団にいた?」
「オレが起きた時には布団にいたよー」




まじか、蹴られなくてよかったな。
あの巨体の紫原に蹴られたら打撲じゃすまなさそう。内臓破裂的な。



「ああ、それは緑間が」
「緑間?」
「……身体を痛めるのだよ」




赤司くんの言葉に緑間を見やれば目をそらして眼鏡のブリッジを指で押す。
どうやらわたしは彼に運ばれたらしい。
重かっただろうな…痩せますごめんなさい。隣に座る緑間を見れば何かを察知したのか眉を潜め顔を歪める。
ほんとツンデレだな真ちゃん。



「緑間ありがとう!」
「寄るな!」
「なーんーでーありがとー」
「わかったから離れるのだよ…!」



からかおうと顔を覗き込めば薄く頬を染めて眉を潜める緑間。おお、照れてらっしゃる。


ふふ、顔を背けようとしたって無駄だぞ、こうなったわたしはしつこいんだ。


「ありがとう真ちゃん!」にーっこりと口角を上げて緑間に詰め寄る。普段バカにされまくってるからね。これくらい許してくれ。

楽しんでいると首根っこを引かれ無理やり引き剥がされた。「…おい、痴女」視線を向ければ青峰。誰が痴女だ。




「…こんな誰にでもいい顔する女だったのしばちん。見損なったわー」
「バカ乳が足りねえよ、でかくしてから出直してこい」
「でっかくなってもやってやらん」
「柴田、青峰と緑間も同じようにやってほしいと言っているぞ」
「い、言ってねーし!しばちんの売女!」
「心が…もたない…」





ぎゃあぎゃあと騒いでいたら目を覚ましたさつきちゃんが二階から降りてきた。






さて、一人だけはめられて悔しかったから黒子にも同じ気分を味あわせてやろう。

寝坊だ!と慌てて黒子の身体を揺すれば目を小さく開いて「どうせ居てもいなくても気付かれないからいいです」と再び目を閉じた。なんかごめん。いや、起きろよ。







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