背伸びする彼女に甘い微熱を(2000hit記念作品・はやヴィヴィ)
ここは管理局にある、元機動六課部隊長の職務室である。
此処ではいつも、はやてとリィンの二人で業務をこなしているのだが、今日ははやて一人だけである。
今リィンは、マリエル技官から新型デバイスの試作品について意見が聞きたいとのことで出張中なのだ。
「なんやこんな静かに業務こなす日もたまにはええなぁ」
デスクワークで張った背中をソファーで伸ばしながら一言。
いつも守護騎士たちが周りにいてくれるはやてにとって、一人だけでいる時間はさほど無い。
とても新鮮な感覚に少しうきうきしているのがわかった。
だが、その新鮮な時間も小さな少女によって幕を降ろされた。
ふと、小さな手で視界を遮られた。
「……」
「ふふっ、だーれでしょう?」
「……ヴィヴィオ」
「せーいかーい!」
手が放され視界が広がる。
振り返ってみるとニコニコした制服姿の少女が一人。
「こんにちはっはやてさん!」
「はーい、こんにちは…じゃなくてやなぁ」
「何ですか?」
「今はやてさんお仕事中なんやけど」
「知ってますよ?デスクワークおつかれさまですっ」
はぁっと苦笑いをしながらため息。
最近相手をくるめてしまう程の人懐っこさが管理局のエース・オブ・エースである母親に似てきたなぁとよく思う。
「今日はどないしたん?」
「なのはママが、今日フェイトママの帰り早いらしいから迎えに行って驚かせちゃおうって」
「ほー…で、肝心のなのはママは?」
「多分もうフェイトママの所にいると思います」
「ん?ヴィヴィオは行かないん?」
「だって二人の邪魔はしたくないし、何より二人の世界にすぐに行っちゃうから」
「…ヴィヴィオはよくできた子やね」
よしよしとヴィヴィオの頭を撫でた。
あの夫婦は、せめて外ではスイッチをオフにして欲しいものだ。
「それにね…」
「ん?」
ヴィヴィオがニコニコしながら見上げてきた。
「はやてさんにも会いたかったの!」
「っ!?」
不意打ちの発言に、撫でていた手も止まってしまった。
ヴィヴィオが首に抱きついて顔を近づけてきた。
「ふふっ、はやてさん嬉しいですかー?」
「お、大人をからかっちゃいけません!」
思わず動揺してどもってしまった。
ヴィヴィオの腕をやんわり解く。
「嬉しくないんですか?」
「いや、別に嬉しいんは嬉しいけど…」
本当になのはちゃんに似てきて怖い。
「全く…ヴィヴィオは何もせんでも可愛いんやから、ちゃんと小学生らしくしてやぁ」
ヴィヴィオが目を点にしてぽけっとした顔をした。
「はやてさん、ヴィヴィオのこと可愛いって思ってるの?」
「え?も、勿論や」
ヴィヴィオがうっすらと頬を赤くして、上目遣いで聞いてきた。
「そっかぁ、えへへっ」
年相応に可愛らしい笑みを浮かべる。
素直に嬉しそうなヴィヴィオの様子に、はやて自身も素直に可愛いと思った。
はやてはそっとヴィヴィオの前髪をどけ、そのまま額に口付けた。
「そんなわけやから、無理して背伸びせんでじっくり大人になるんやで?」
ヴィヴィオはびっくりして額を手でおさえた。
その顔はりんごのように真っ赤だ。
ヴィヴィオに押されっぱなしでは最後の夜天の王の名がすたるというものである。
はやてなりの“反撃”であった。
すると突然部屋のドアが開いた。
「あぁ、やっぱりはやてちゃんの所だったかー」
「ごめんヴィヴィオ、遅くなっちゃって」
そこにはなのはとフェイトが立っていた。
「こらこら、娘ほったらかしで何しとんねん」
「ごめんねはやてちゃんー。だってフェイトちゃんが…」
「わ、私?私だけのせいじゃ…」
「あらかた想像つくから弁明せんでええよ」
全くこの夫婦は、と苦笑いを浮かべてしまう。
するとなのはがヴィヴィオの変化に気づいた。
「あれ、ヴィヴィオ少し顔赤くない?」
「え!?そ、そんなことないよっ?」
「あ、ホントだ。少し赤いよ。風邪だといけないから早く帰ろうか」
フェイトも気づき、慌ててヴィヴィオの額に手をあてる。
「というわけで今日は帰るねはやてちゃん」
「おー、早く帰ったほうがええよ」
「うん、今日はありがとうはやて」
なのはとフェイトがヴィヴィオの手を引いて部屋の外に向かう。
「ヴィヴィオ」
「?」
まだ赤みのかかっている顔でヴィヴィオが振り向く。
はやてはにこっと笑った。
「お大事にな」
「っ…はいっ」
照れながら嬉しそうに答えるヴィヴィオ。
そんなヴィヴィオを不思議そうにみる母親たち。
誰が見ても何も起こりそうに無い二人の関係。
そんな二人の遠く見える距離が少し近づいたひと時だった。
end
あとがき
はい、はやヴィヴィです。
今回はちょっとはやてに頑張ってもらいました。(笑
はやヴィヴィの甘々の書き方誰か教えてくださi(ry
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