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君をつれていくには(50000hit記念作品・はやヴィヴィ)
「……」



隣にヴィヴィオが座り、斜め前になのはちゃん。目の前にフェイトちゃんという配置でリビングのテーブルを囲んでいる。




隣と斜め前の二人は楽しそうに談笑しているのに、目の前の透き通るような赤い瞳だけが、眉間にしわを寄せつつただ私を睨みつけてくる。


それはいつもの大人っぽい雰囲気を完全に振り払った、感情がそのまま表にむき出している表情だった。




「あのう、そんなに睨まれても、困るんやけど…」
「別に、睨んでなんかない、よ」




ああ、胸が痛い。






今日は大切な用事でヴィヴィオの家、つまり高町家のマンションに来ている。




その大切な用事とはただひとつ。






所謂、ご両親への挨拶である。






ついこの前、ヴィヴィオが十六歳になり、ミッドの法律で結婚が出来る年齢に達した。

また、ミッドでは同性婚も認められている。
よって、めでたく私、八神はやてと高町ヴィヴィオの結婚が問題無く出来る環境が整ったのだ。




すでにプロポーズもちゃっかりとすませてあったし、あとは両親への挨拶のみという状態。




私と目の前の二人とは言わずとも知れた親友同士であるから、改まっての挨拶くらいさほど問題ではないだろうし。







なんて考えは通用しなかったわけで。






なのはちゃんは、当初からヴィヴィオに恋愛相談を受けていたこともあって結婚については全面的に賛成をしてくれた。



問題はフェイトちゃんなのである。




そういった方面に疎いフェイトちゃんは、私がヴィヴィオと付き合ってることに大分長い時間を置いてから気づいた。


そしてその時のうちひしがれ様ときたら半端なものじゃなかった。
正直あんなに人のことを睨むフェイトちゃんはスカリエッティ以来だと思う。




交際発覚後一週間くらいは、いつフェイトちゃんに刺されるのかと震えて身構えていたくらいだ。




そしてそんな彼女にまさかの結婚を報告するのだ。



晴れ晴れしい門出のイベントなのに、なんて鬱な気分なんだろう。


今日は無事に高町家から帰れない気がしてきた。





「…はやて」
「は、はい」




フェイトちゃんがその重い口を開いた。




「私はヴィヴィオの意志を最優先に考えたいと思ってる」
「勿論や」
「ヴィヴィオが望むなら、相手がはやてでも仕方がない」
「し、仕方がないって…」
「フェイトちゃん、はやてちゃん困ってるから」




なのはちゃんが苦笑して助け舟を出してくれた。


ああ、ありがとうなのはちゃん、助かるわ。





「なのは、これは私とはやての問題だから」





前言撤回、やっぱ全然助かってなかったです。




普段はなのはちゃんに強く出れないくせに、今のフェイトちゃんは下がることなくびしっと返した。


てかフェイトちゃんと私だけの問題なんかい。




「フェイトちゃん、うちとヴィヴィオの結婚、やっぱり反対ですか」
「反対ではない、けど納得はできない」
「…ですよねー…」




では、どうすればいいと言うんだ。
今のフェイトちゃんを納得させるだなんて無理難題すぎる。


下手な言い回しなんかして機嫌を損ねたらたまったもんじゃない。



脳をフル回転して考えているけど、全く名案が思い浮かばない。
いつもの悪知恵を考えるときとはわけが違う。





そんなとき、左腕を引っ張られる感覚がした。

見ればヴィヴィオが私の左腕に抱きついているではないか。



フェイトちゃんのこわばった顔は青ざめ、私の顔は引きつった。




「い、いきなりどうしたんやヴィヴィオ?」
「フェイトママ、気持ちはわかるけど、私にははやてさんだけなの」
「え…」
「他のどんな人にも変えられない、かけがえのない、大切な人なの。フェイトママにとっての、なのはママみたいに」




ヴィヴィオが凛とした顔つきをフェイトちゃんに向ける。


その芯の通った声色はなのはちゃんにそっくりだった。




「ヴィヴィオ…そっか…そうだよね、二人を祝福しなくちゃね」




フェイトちゃんの表情から小さな笑みが零れた。



先程まで私を睨みつけていた瞳は潤み、今にも泣き出しそうで、それはまるで結婚式での新婦の父親のようであった。




ああ、何とか温かい方向に空気が流れている。
これはもう、よくやったヴィヴィオと言う他ない。




が、それは刹那の幸せだった。




頬に柔らかな温もり。

それは二人きりのとき限定で感じることのできる感触であった。



今私の頬にあるのはヴィヴィオの唇。





周りがぽかんとしていると、唇を離したヴィヴィオが一言。


「えへへっやったね!ママたちに認められたってことは、ヴィヴィオの全部はもうはやてさんのものだよっ!」
「な…!?」
「これからヴィヴィオのこと、はやてさんの好きなようにしていいからね?」
「ちょ、両親の前で何言うて…!」
「…は、はやてぇぇええよくもヴィヴィオをキズモノにしたなぁぁぁぁあ!!」
「誤解やぁぁぁぁぁあ!!」





視界にはバルディッシュを手にするフェイトちゃんが迫り、高らかに私の悲痛な叫び声が響く。



その隣で状況をわかっているのかわかっていないのか、ヴィヴィオがからからと笑っている。





かくして、天使であり小悪魔でもあるようなこの愛しい彼女を無事(ではないけど)いただくことができたのだった。






絶対に幸せにしてみせる。





当然そのつもりだけど、何故か私の中のサバイバルナチュラルがそう激しく騒いでいた。






end




あとがき↓
フリリク内容は「はやヴィヴィではやてに両親への挨拶させる」だったんですが、どっちの両親か迷って結局高町夫妻にしました。はやてだと、超シリアスになりそうだったので(笑
なんか頭の悪い内容になってしまったんですがこんな感じで大丈夫ですかね?(汗
何はともあれフリリクありがとうございました!

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