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ずっと、君と、いつまでも(1000hit記念作品・スバティア)
六課解散を間近に控えた頃。あたし達は自分達の荷物の片付けや部屋の掃除などの最終チェックをしていた。

「ふぅ、こんなものかしらね。…ってスバル、あんた全然片付いてないじゃない!」
「ご、ごめんティアっ。アルバムが出てきたからつい見入っちゃってた。」

そうへらへら苦笑いを浮かべたスバルの手には、訓練校時代から六課配属にかけての思い出が詰まった写真が収められたアルバム。

「もう時間が無いってのに…。あたしも手伝うからちゃっちゃと片付けるわよ!」
「へへっ、ありがとうティアっ」
「べ、別にあんたのためじゃないわよっ。あんたが片付かないと同室のあたしが困るんだからね!」

わかってるよーなんて言いながらゆっくり片付け始める。
ホントにわかってんのかしらっ。





二人で座りこんでダンボールの中身と格闘し始めてはや三十分。思うより、片付けはあまり進んではいなかった。

「このタオル、もう捨てるわよ。」
「えぇーっだめだよっ!」
「何でよ。もうボロボロじゃない。」
「だってそれ、六課での訓練始まったばっかりのときに、あたしのタオル少ないからってティアがくれたやつだよ!?」
「…あんた、そんなのまだ持ってたの?」

正直呆れてきた。
さっきからいらなそうな物を捨てようとすると八割方まだ使えるよと言われて止められている。
片付けられない症候群とはまさにコレのこと。

「あんたねぇ、いい加減捨てなさいよ!全然片付かないじゃない」
「だって、みんな思い出の品なんだもん…」
「まったく、六課解散したらあたしはもう一緒じゃないんだから…」

自分で言ってはっとした。

そうだ、あたしはもうこの子といつも一緒じゃ無くなるんだ。
こんな風に怒ったり、笑ったり、二人で自主練したり。簡単にはできなくなるんだ。


あたしが急に黙ってしまったのを見て、スバルが心配そうに顔を覗いてくる。


「ティア…?」
「……っ!」


スバルの温かさが近づくと、涙が溢れてきた。


「ティ、ティア!?」
「っさい、見んなっ」


スバルに泣き顔を見られたくなくて、手で顔を覆う。


しばらくそうしていると、スバルは優しく微笑みながらあたしを抱きしめてきた。


「…ティア」
「っ何よ…」


スバルの鼓動が伝わって、心地良い。


「六課は終わっちゃうけど、あたし達はまだ終わりじゃないよ。」
「っ!」


心がスバルの温かさで包まれていくのがわかった。


「あたしはティアのことが好き、めちゃくちゃ大好き!だからどんなに会えなくてもティアのことを想えば頑張れる気がするんだ。」
「あ、そ…っ」
「ティアは?あたしと同じ気持ち?」
「…あ、当たり前よ…っ!」
「じゃぁ、大丈夫だよ。何も不安がることなんか無いよ」



その通りなんだけど。
そう言ってくれるのは嬉しいけど。
やっぱり不安は完全には拭えない。


あたしのそんな様子を見たスバルは、立ち上がり、まだ片付けていなかった机の引き出しを開け、ひとつ、長方形の箱を取り出した。


「解散式の日に渡そうかと思ってたけど、今でいいかな」


そう言って再びあたしの前に座り、箱を開けた。

中には対になっているペンダントが一組入っていた。お互いのペンダントを合わせるとひとつのハートになる、よくあるタイプのものだった。


「これ…」
「うん、何言っても離れちゃうとやっぱり寂しいから、二人で同じペンダントが欲しいなぁって思ったんだけど…どうかな?」
「…いいに決まってるじゃない」


あたしの返答を聞いたスバルは、嬉しそうに箱からひとつペンダントを取り出して、あたしの首にそっとかける。


「うん、凄く似合ってるよ。ティア」
「あっそ…」


ありがとうって言いたかったけど恥ずかしくて言えなかった。でも不思議とスバルにはあたしの“ありがとう”が伝わってる気がした。


スバルも、もうひとつのペンダントを自分の首につける。


「えへへ、これでいつでもティアと繋がってる気分!」


もう幸せそうに笑っちゃって。こっちまで幸せな気分になるじゃないの。

いつの間にか涙は止まって、一緒に笑っていた。



「…じゃぁ、それがあればこれは要らないわね」
「…何その鍵?」
「あたしの新しい部屋の合い鍵」
「い、い、要るーっ!ちょーだいっちょーだいっ!」
「えー、だってそれがあればあたしと繋がってる気分になれるんでしょ?」
「それは精神的に、ってことー!ちゃんと物理的にも繋がってたいよーっ!」
「…変な言い方すんな」



ぎゃーすか、ぎゃーすか騒いでいる目の前のこの子が愛おしい。

温かくて、優しくて、明るいあの子。




でもこれ以上うるさくても困るので意地悪はもうやめてやることにした。


「わかったわよ。わかったからちょっと黙ってなさい」
「ティ…」


スバルの襟を掴んで引き寄せ、キスをした。

と、同時にスバルの手に合い鍵を握らせる。


やってから恥ずかしいことに気がついたけど、恥ずかしさより幸せの方が何倍も濃く感じた。



スバルは一瞬ぽかんとあたしのことを見ていたけど、すぐに顔をへらへらと崩す。


「へへへ…」
「…何よ」
「ティアからのキスってめったに無いんだもん」
「感謝しなさいよ。合い鍵まであげたんだから」
「うんっ。それよりもティア」
「何?」
「これだけ?」


今度はこっちが一瞬ぽかんと呆気にとられてしまった。


「ちょっと、まだ片付けも終わって無いじゃないの」
「だって、せっかくティアが積極的なんだもん。今は積極的なティアを味わいたいなっ」


顔から火が吹くかと思った。
まったく、調子に乗るとすぐこうなんだから。


「…今日だけだからね」
「うんっ!…ティア、大好きだよ」
「…あたしも」





そうあたし達はまだ終わりじゃない。



これからもずっと、君と、いつまでも。




end




あとがき
1000hit記念作品です。初スバティアSSだったわけですが…どうでしたか?
もうスバルは休みの度に合い鍵使ってティアんちに行けばいいy(ryそしてティアは呆れつつも嬉しくて料理とかいつも以上に振舞っちゃえばいいy(ry

読んでいただきありがとうございました。

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