ラブファンブル
6
「……結城さん、反応してますよ」
二条が小さく呟いた。いろいろ弁明しようとしたけど、無駄に終わると思ってやめた。
「嘘つき」
二条はため息をついた。それでも俺のモノを撫でる手を止めない。
「……もう良いだろ?やめてくれ」
「本当にそう思ってます?やめてほしくないんじゃないですか?」
「な、何を…」
「結城さん変態だから……実は喜んでたりして」
「……そんなことない。離せ」
少し強めに言うと、二条はようやく手を離す。そしてまた、ため息をついた。
どうして二条は、こんなことするんだ。三年前は、こういう話題さえ苦手だったハズだ。
やっぱり俺を恨んで……?
「……もうすぐ、二条の住んでるマンションだよな」
いろいろ言いたいことはあったけど、なんとかそう言った。
二条が頷くのを横目で確認する。
「俺、お前の前に二度と現れないよ。約束する」
「……別に、そんな約束してもらっても困ります」
車の中に、重い沈黙が訪れた。
カーナビによると、この建物がオリックスマンションらしい。
空いてるスペースを探して適当に駐車させる。
「……ここで、良いんだよな」
横を見ると、結城は俯いて何も返さない。着いたとたんに降りると思ったのに……どうしたんだ?
もう一度声をかけようとすると、二条が俯いたまま話し始めた。
「それが結城さんの答えなんですか?」
「二条……?ここで降りるんだろ?間違ってるなら…」
すると二条は俺を思い切り睨む。
そして、言った。
「いくじなし」
言い終えると同時に二条がドアを開けようとしたので、俺は思わず二条の肩を掴んでしまった。
二条はピタリと止まって振り向きもしない。
『いくじなし』?
一体、なんのことを言ってるんだ。
「に、二条…」
引き止めちゃいけないことはわかっていた。
それでも、二条が何を考えてるのか知りたいという衝動は、抑えられなかった。
しばらくして、二条が振り向く。
「なんですか?」
肩を掴む手が緩んだ。
二条の何かを試しているような視線が、俺を惑わせる。
「もしかして、変なこと考えてます?別にいいですよ、部屋に来ても」
「な……二条?」
「したいんでしょ?俺と、こういうこと」
二条が再び俺の股間に手を伸ばす。
手をおしのけると、すぐに反対の手が伸びてきた。
「二条!!いいかげんに…」
「いいんですか?もう一度俺とヤれるチャンス、逃しちゃって」
『もう一度』…
あの日の記憶が、昨日のことのように甦った。
部室の冷たい床、二条の体…
「結城さん、選んでいいんですよ?このまま帰るか、部屋に来るか」
二条の目が、俺を誘ってるみたいに見えた。
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