ラブファンブル
5
「に、二条……あの…」
「なんで結城さんがいるんですか?」
赤信号だったので、俺は停止して隣を見た。二条の寝ぼけた顔がだんだん今日の冷たい顔つきに変わっていく。
「井上って奴から頼まれたんだ。お前を送るようにって……ちょうど、同じ方向だし」
俺じゃ、嫌だろうけど…
震える声でそういうと、反応が怖くて前を向いた。信号が青に変わって、俺は車を発進させる。
「……そうですね、結城さんとは口もききたくないですけど」
二条の冷たい声は、俺の耳を切り裂くみたいだった。
「方向が同じなら仕方ないですね」
俺は何も言うことができなかった。
『結城さんとは口もききたくないですけど』
当然だ。当然なんだ。
それなのに、こんなに傷つくなんて…
「あれ、俺の住所……?」
二条がカーナビを指さす。画面には目的地として二条の住所が表示されている。
俺はさっきの会話を説明した。
「二条は寝ぼけてたから、覚えてないかもしれないけど…」
「……覚えてないです。俺、酔うと記憶なくなるタイプなんですよね」
俺が相づちを打とうとしたその時、二条の手が俺の太ももに伸びてきた。
「結城さん、俺が寝てる間に俺に変なことしてませんか?」
「なっ…」
赤信号に気づいて、慌ててブレーキを踏む。危うく、事故を起こすところだった…
「し……してない。絶対にしてない」
「本当ですか?」
二条はなんでもないことみたいに俺のももを撫でる。
あの時のことを、責めてるのか?謝れと言っているんだろうか。
確かなことは、二条はあの時のことを忘れてないということだけだ。
「……二条、」
「じゃあ体で証明してくれます?結城さんが、俺のことそういう目で見てないって」
俺の言葉を遮って、二条はその手を股間に伸ばしてきた。
「に……二条!!お前、何を…」
「俺に対して下心がないなら、こんなのなんでもないでしょ」
二条は優しい手つきで、服の上から俺のモノを撫でる。
下半身を意識しないようにすればするほど、二条の手つきに反応してしまう…
「二条、やめろ…」
二条は聞こえないフリを貫くつもりらしい。
運転に集中しようと努力するけど、鼓動はどんどん速くなる。
一体、二条はどんなつもりでこんなことをしているんだ?
これはあの時の復讐なんだろうか。
「二条……今は、ちょっと…」
「結城さん、運転中なのに変な気起こすんですか?やっぱり最低ですね」
二条がイタズラに笑う。
情けないけど……二条の言う通りだ。
俺のモノを二条が触ってくれていることが、本当は少なからず嬉しい。運転中なんて関係ない。
興奮せずには、いられない。
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