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ラブファンブル

「そろそろお開きにしましょーかー」

楠田が全員に声をかける。結局、二条とはあの一言しか話さなかった。
『そんな人、ごまんといるんじゃないの?ねぇ、結城さん』

二次会を企画してる奴もいたけど、俺はそそくさと帰ることにした。

「楠田!じゃあ俺、帰るな」

「あっ結城!!ちょっと待って」

居酒屋を出ようとした、その時。楠田に呼び止められた。隣には二条の友達だという、井上という男。

「結城、車で来たんだよな?」

「あぁ……それがどうした?」

楠田に答えると井上が割って入る。

「コイツさっきから寝ちゃっててさ……そんな遠くもないから、送ってやってくんないかなー?西区なんだけど」

そう言って井上が指をさす先には、座敷に寝転んですやすやと眠る二条の姿があった。
さっきの冷たい態度からは想像できないほど、純粋な寝顔をしている。

「……って、二条、独り暮らしなのか?」

「そうだけど……なんでわかったの?」

俺は慌ててごまかす。俺の記憶では、二条は西区に住んでなかった。そうか、二条ひとり暮らしを始めたのか。全く知らなかった…

「まぁ悪い奴じゃないから……おい、二条」

井上が二条の頬を叩く。二条は「うーん…」と半分寝たまま返事をした。

「結城さんて人が送ってくれるから、お前ちゃんと帰れよー」

「んー……お願いしまーす…」

二条は俺だとわかっていないのか、目をつぶったまま俺に敬礼のマネをした。

「じゃあ、そういうことで」

「え、いや、ちょっ…」

井上は早く女の子と二次会に行きたかったのか、二条を押しつけるようにその場を後にしてしまった。
楠田も帰ったみたいだ…
結局、二条と俺はその場に取り残されてしまった。

ここで放置して帰るのは、二条がかわいそうだ。たとえ嫌がられても送っていくか、もしくはタクシーでも呼んでやるしかない。
また眠りについてしまったのか、寝息をたてている二条を見つめる。俺は勇気を出して二条に声をかけた。

「に……二条、お前の家って…」

「家……?家、帰りまーす…」

……完全に寝ぼけてるみたいだ。
俺は二条に近づいて、体をゆすった。

「二条、帰るんだろ?家は…」

「うーん……連れてって…」

二条が両手を前に差し出したので、俺は仕方なく腕を引いて二条を立たせた。二条の腕は学生時代と変わらず細い。よくこんな華奢な体で、野球やってたな…

立ち上がった瞬間、二条は俺にもたれてきた。

「二条、大丈夫か……?」

心配すると同時に、二条の体がすぐそばにあるという事実に胸をときめかせてしまった。
やっぱり俺は、ずっと二条をそういう目で見ていたのかもしれない。
どちらにしろ、俺のしたことは犯罪以外の何でもないけど…

二条となんとか居酒屋を出て、結局車の助手席に座らせた。

「二条、住所は?」

「えー?おうちは……オリックスマンション…」

カーナビに西区のオリックスマンションで検索をかける。二条を乗せて、俺は車を出発させた。

二条はよっぽど眠いのか、またコクリコクリとし始める。
俺はなるべく二条を見ないように運転に集中した。

「……ん…」

しばらくして二条が起きた。
俺の方を見て、寝ぼけたまま声をかける。

「あれ……結城さん?」

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あきゅろす。
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