もうちょっとメイクビリーブ
R
タバコ、吸いてぇな…
チカラのことを思うと心が落ち着かない。吸えば少しはスッキリするかもしれないけど、やっぱりチカラが嫌うタバコを吸うのは躊躇ってしまう。
『お前って……何考えてんのか、よくわかんねぇ』
チカラはあの言葉を、どう受け取ったんだろうか…
部屋のタバコを見つめながらそんなことを考えていると、インターホンがなった。
まさか、チカラが……?
そんな期待を胸に子機を取る。
『ししょおおぉぉおっ!!』
「……お前かよ」
来訪者は真木だった。
大方、ボスへの反逆は失敗に終わったんだろう。だからって俺に言われても…
『大変なんですよ!!いや、先に開けてぇや!!俺、見つかったらヤバイねやんか!!』
……わけわかんねぇ。
見つかったらって、同級生にか……?
渋々ドアを開けると傷だらけの真木が入ってきた。
「真木……結局返り討ちにあったのか?」
「はぁ、ボスがそれはもうブチ切れてもうて……そっそれで!!今、俺の代わりに、中谷さんがっ…」
思考回路が、一瞬止まった。
「……ち、チカラがなんだよ?」
「チカラ?あ、中谷さんですか?だから中谷さんが助けにきてくれて、俺の代わりになるって言ってきて……俺は隙を見て逃げてきたとこやねんけど」
あ……頭が、回らない。
チカラが、真木の代わりに……?
「どないしよう、中谷さんが…」
「……ど、うするって、行くに決まってんだろ…」
なんとかそう言うと、真木が「こっちです」と言って案内してくれた。
あの超絶お人好し、どこまで心配かけさせれば気が済むんだ!!
「師匠!!あそこです!!」
真木が指差した先に、中学生と高校生の集団が見えた。
あいつらが、俺のチカラを…
「中谷っ!!」
男たちが一斉に振り返る。
その隙間から、泣きそうなチカラの顔が見えた。顔に傷はないけど、制服に靴底の跡がついてる。
頭に血がのぼって、爆発しそうだ。
「誰?お前…」
何人かは前にいた奴等と同じだったけど、味方が多いからかニヤニヤ笑っている。
「……中谷を、離せ」
怒りが臨海点を越えてる。
こいつら、絶対に殺す…
「真木の代わりはコイツで、コイツの代わりはお前?」
「……なんだと?」
「そういうことだろ?」
よっぽど自信があるんだろうか。一際背の高い奴が俺に歩み寄ってきた。
「俺は中谷を離せっつったんだよ。日本語理解できねぇのか?」
「なっ……!!」
そいつが拳を振り上げる。
バカか?そんな大袈裟に殴っても、当たるわけ…
「東郷先輩!!」
……あ…
「いっ……て…」
「なんだ、見かけの割に弱いじゃん」
男は俺を殴った拳を見せて、鼻で笑った。
殴り返したいのはやまやまだ。でも…
『俺は、東郷先輩のそういう暴力的なところ嫌いですっ…』
こんなことを言われた矢先のことだ。
チカラに、嫌われるかもしれない…
「おい、次はコイツにしようぜ」
「そうだなー」
全員が俺を見てニヤニヤと拳を固めている。
……どうすれば、暴力を使わずに済むんだ?
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