もうちょっとメイクビリーブ
R
いくらチカラの為に頑張ったって、チカラに嫌われたんじゃ意味ねぇな。
「あぁっリュウくん!うちの教室の窓ガラス全部割ったでしょ!?寒くて帰ってきちゃったよ!」
「……昴」
適当に街をブラついていると、親友が呆れた顔で立っていた。
「屋上のドアも閉まらなくなったしさぁ……ホントに暴力的なんだから!!」
コイツの冗談はいつも冗談らしさがあるからイラつかないけど、今のはグサっときた。
『俺は、東郷先輩のそういう暴力的なところ嫌いですっ…』
チカラが、あんな風に思ってたなんて知らなかった。
そりゃ転校生といて楽しそうなワケだよな。あいつ見るからに平和そうだし…
「リュウくん、聞いてる?」
「……チカラって……ずっと俺のこと、嫌ってたのかもしんねぇ…」
あの時から何も、変わってないのかもしれない。俺が何したって、全部ムダで…
「……そんなことないんじゃないの?」
昴があっけらかんと言う。
何を根拠にコイツは…
「あ、根拠とかはないけど……中谷、あの後めっちゃ後悔してるような表情だったから」
「……チカラが?」
「俺にはそう見えましたよー」
昴はそう言って誰かに電話をかけ始めた。恋人の一人と会うつもりらしい。
電話を見て、ふと真木のことを思い出した。
あいつ、今日も俺のこと待ってんだろうな……チカラとのケンカの原因になった以上、もう関わるわけにはいかないけど…
何も言わないのはさすがにマズイと思って真木に電話をかけた。
なんだかんだ、真木のことを心配してんだな。俺…
『師匠?なんですか昼休みに!!』
あぁ、中学は昼休みなのか…
「お前、1人で飯食ってんの?」
『まさか。飯なんか奪われるのがオチですもん、食うてません。裏庭で時間潰してますわー』
……さすがに俺も、昼飯くらいは食えてたけどな…
「……お前、そろそろ本気でイジめから脱出すれば?」
『え、いやそんなん前から思うてて…』
「でも、結局ビビって逃げてんだろ。それって進歩なくねぇか」
『……師匠だったら、どうします?』
「ボスとやらに、一回ブチ切れる」
しばらく沈黙の後、真木の明るい声が聞こえた。
『なんかめっちゃヤル気出てきました
わ!!ボスに一回ガツンと言うたります!!師匠の名に懸けて!!』
「いや、俺の名にかけなくていいから…」
言い終わらないうちに、電話は切れてしまった。
結局、言おうと思ってたことは何も言ってねぇ…
「お弟子さん?」
振り向くと、まだ昴がいた。
「リュウくん昔の自分を重ねてるんじゃないですか?」
確かにそうだった。
だから、真木にはなんとかなってほしくて…
「まぁ、でも…」
「ん?」
「俺にはお前がいたからな」
昴は目を丸くした後大笑いして、迎えに来た恋人の車で去っていった。
……チカラは今、何をしているんだろうか。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!