もうちょっとメイクビリーブ
R
俺だって、最初から強かったわけじゃねぇ。
『俺も、あんな風になりたい』
そう言われた、あの日からだ。
中学3年の時、チカラと会ったから…
ふと横を見ると、チカラも俺の方を見ている。こうして見つめあえる関係になれるなんて、あの時は夢にも思わなかったよな…
なんて、チカラとの思い出に浸っているとタイミングよく「中学の頃からケンカ強かったんですか?」と真木の声。
「いや……そんなことはねぇけど…」
たぶん、ほぼ全生徒から嫌われてた。俺はよっぽど愛想が悪かったらしい。
そう思うと、真木のこともさほど他人事じゃねぇよな…
その時、急に真木の携帯が鳴った。
「あー!オカンからメールや」
どうやら、やっと帰ってくれるらしい。良かった…
やっとチカラと二人きりになれる。
「そういえば、師匠のオカンはまだ帰ってけぇへんのですか?」
「帰ってこねぇよ、いねぇからな」
「えぇっそれってどういう…」
「詮索すんな。早く出てけ。永遠にうちに来るな」
「そんなー師匠!!」
なんとか真木を追い出す。
疲れた……けど、これも全てチカラのためだ。俺も少しは優しいってことがわかってもらえたハズだし、今日こそ久々にチカラと…
「中谷…」
「じゃあ、俺も帰りますね」
「なっ……なんでだよ!?」
「もう、遅いし…」
「ダメだ!!泊まっていけ!!」
「……やだ」
……か…
可愛すぎるだろ…
『やだ』なんて、そんな可愛い言い方されたら…
「……わかったよ……送っていく」
「え、別に1人で帰れますよ…」
「あぶねぇだろ…」
それに、少しでも長くチカラといたかった。せっかく真木がいなくなったのに、チカラも帰るなんて…
……なんか、すげぇ虚しい。
何をどんなに頑張っても、チカラは俺のことなんか眼中にないんだろうか?
結局2人でチカラの家までの道を歩く。途中、チカラの様子がなんだかおかしい気がした。
「中谷、どうした?」
「えっ?……あぁ、真木くんイジめられなくなるといいですね」
「……そうだな」
なんだ、まだ真木の心配してたのか。
ホントお人好し…
「あ、送ってくれて、ありがとうございました」
チカラの家の近くまで来てしまった。真木のせいで、全然一緒にいた気がしねぇ…
「……中谷」
少しくらい、いいよな?
無防備なチカラの体を引き寄せて、素早く唇を奪う。
舌を絡ませると、チカラも少しずつ応じてくれた。
舌の動きに合わせてチカラの肩がピクンと跳ねる。可愛い…
「チカラ……可愛い…」
「や、やめてください……んっ…」
可愛いお前が悪いだろ…
つーか、このまま続けてたら俺もヤバい。正直たまってるし、チカラが可愛すぎて、我慢できそうにない…
「チカラ……どうしてもダメか?」
「……何がですか?」
「……ヤりてぇ」
遠回しに言っても通じないことを思い出して、単刀直入に言ってみた。
するとチカラは潤んだ瞳でじっと俺を見つめる。
「……俺は、ヤりたくないもん」
「なっ……か…」
可愛すぎる!!
って、何度思わせれば気が済むんだ!?
ワザトこんな可愛い言い方して、俺を困らせようとしてるんじゃ…
「じゃあ、また明日!!」
ぼーっとしてる間にチカラは家に帰ってしまった。
結局今日も、お預けかよ…
なんか俺、本当に犬みたいだ。
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