ラブスクイズ ____ 「二条!!」 駅の入り口が見えてきたところで、結城さんの声が聞こえた。 “嬉しい”とか“泣きそう”とかいう気持ちを表情に出さないよう注意しながら振り向くと、息を切らして走る結城さんが見えた。 「二条……ごめん、今お前が帰ったって聞いてビックリして…」 結城さんは息を整えながら俺に近付く。俺はドキドキして何も言えない。 「そんなに怒るなんて思わなくて……付き合ってるって言えば良かったよな…」 「……別にいいです。結城さんは言いたくなかったんでしょ」 あくまで強がる俺の言葉に結城さんが首を振る。 「二条のためにも隠した方が良いと思って……俺は誰に知られても構わないよ」 「……本当に?」 「あぁ。それにアイツらなら、きっと」 「本当に俺のこと好き?」 結城さんは一瞬戸惑った後に、優しく笑って「好きだよ」と答えた。 その穏やかな目とか、温かい空気とか、全部俺の好きなところだ。 「……じゃあ、キスしてください」 「え?」 「今、ここで」 結城さんの表情が一変。 でも「またワガママか」って思われてもいいから、結城さんにキスしてほしかった。 「……通行人に、見られるぞ」 否定の響きを込めて結城さんが言う。 そこまで多くはないけど、老若男女の通行人が駅に向かって歩いている。 「誰に知られても構わないって言いませんでしたっけ?」 自分でも呆れるほど挑発的に言うと、結城さんがため息をついた。 かと思うと、体が少しずつ近づいてくる。 思わず目を閉じると、ほんの一瞬だけ温かい唇が触れた。 「結城さん…」 結城さんは真っ赤な顔で周りを見回してる。可愛い。 それにしても… 「そんな子供みたいなキスだと思いませんでしたっ」 「わ、悪い…」 踵を返して駅に向かって歩き出すと、結城さんが慌てて引き留めてきた。 「二条、戻らないのか?」 「……もういいです」 「じゃあ俺も帰ろうかな」 あれ、もしかして誘ってる? 結城さんにしては偉い。ホテルを探すか、俺の家でも良いから… 「……結城さん?」 結城さんはなに食わぬ顔で定期を取り出すと改札を抜けていった。 本気で言ってたんだ… [*前へ][次へ#] [戻る] |