隣の芝生は青いンデスペシャル
☆☆☆☆
---Chikara side---
「チカ兄ちゃん、元気ないね?」
紅葉が俺の顔を見上げて尋ねた。
公園までの道を二人、手を繋いで歩いている。
「え、そうかな?」
「そうだよー」
もしかして、さっきのことが原因かな…
学校が終わっていつも通り東郷先輩に送ってもらった時、家に来るよう誘われた時のことだ。
「あ、今日は紅葉と約束してるので遠慮します」
「はぁ?またあの従弟と会うのか?」
たまに遊んでるだけなのに、東郷先輩は紅葉に対して厳しい。
「俺以外の男と会うな」とか言っちゃって、紅葉は親戚だし子供だし…
「恋人の俺よりそいつを優先すんのかよ」
「えぇ……だって先輩とは毎日会ってるし」
「セックスは一週間以上してねぇけどな」
東郷先輩が糾弾するような目で見てくる。
それは確かに、そうだけど…
「とにかく、今日は無理です!さようなら!」
「中谷!待っ…」
逃げるように帰って、こうして紅葉に会いに来た。
東郷先輩ってどうしてあんなに心配性っていうか、嫉妬深いんだろう?
もう少し寛容になってくれたらいいのになぁ…
「まぁいいや。紅葉、サッカーするの?」
紅葉の持っているサッカーボールを指差した。
紅葉の家を訪れた途端「公園に行こう」と引きずり出されたのだ。
「うん!チカ兄ちゃん教えてー」
「えっ……俺サッカー苦手なんだけどな」
どうしようもないまま公園に着いた。
紅葉は精いっぱいボールを蹴ってるけど、距離は短いし方向はバラバラ。
けど俺も、似たようなもんだ…
「チカ兄、上手くなってるー?」
「え、あんまり…」
途方に暮れていると、とうとう紅葉がボールを道路に出してしまった。
すぐに追おうとする紅葉を慌てて引き留める。
「あ、紅葉!車が来たら危ないから一緒に行こ」
「わかったー」
道路を転がるボールを目で追っていると、そばを通りかかった男子高校生がボールを拾ってくれた。
「あ、すみませんうちのです!」
そう言いながら駆け寄る。このへんの高校の生徒だろうか?俺の地元じゃないからよくわからないけど。
「お兄ちゃん、ありがとー!」
「サッカーしてんの?」
男の人が紅葉に話しかけた。
明るい茶髪でシルバーのピアスをしてる。そしてそれが嫌味にならないくらいかっこいい顔をしていた。
「うん!でもチカ兄ちゃん下手だから上手くならないんだー」
「も、紅葉!」
見知らぬ高校生になんてことを……!
と思ったら、男の人は明るく笑った。
「そりゃ意味ねぇな。俺が教えてやろっか?」
「本当に?」
二人は仲良く公園に戻っていく。
俺も慌ててあとを追った。
「あの、すみません……いいんですか?」
「アンタがチカ兄ちゃん?」
「……はぁ」
「女みてぇな名前だな」
「……いやあの、チカラっていうんです」
「あーそうなんだ。俺は高階榊。よろしく」
「よろしくお願いします…」
なんというか、マイペースな人だな…
と思ったけど、サッカーを教えてくれるのはありがたいので黙ってついていった。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!