メイクビリーブ ...☆ 「中谷……一瞬でいいから、こっち見ろ」 見るなと言われたから体育座りになって顔ごと腕の中に隠したら、今度は逆に『見ろ』。 こうなったら意地でも顔を上げたくなくなる。 「中谷っ!!早く顔見せろ!!気がおかしくなる…」 知らないよあんたの気なんて… だってあんな、の、飲むなんて、最低だ!! こんなの彼女ができたとしても絶対やらせたくない。 「……なんで、こんなことするんですか?」 本当にわからない。俺の体のどこに魅力を感じてこういうことしてるんだろう。 モテるんだから、女の子とすればいいのに… 「な……な、なんとなく」 東郷先輩の答えは、想像以上に最低だった。 「……なんとなく!?なんとなくでああいうことできるんですか!?」 「違っ……お前なんでさっきの聞いてないんだよ!!」 さっき?さっき東郷先輩なんか言ってたっけ? 快感に耐えるのに必死だったから記憶が曖昧だぁ… まぁ、何を言ってたとしても『なんとなく』は許されない。 そんな理由で俺はとてつもなく恥ずかしい思いをしたんだぞ!! 「俺、帰ります」 「中谷!!」 「あ……あんたに男にあんなことされた人間の気持ちがわかってたまるか!!」 「な……待てよ!!」 待ってたまるか!! 俺は自分の荷物をひっつかんで東郷先輩の部屋を飛び出した。 東郷先輩の表情は一度も見なかった。見たらまた『まぁいっか』って思ってしまいそうで、怖かった。 で、そのまま翌朝を迎えた。 最悪だ… どんな顔して東郷先輩と会えばいいんだ!? 「でも……俺、許すつもりないしね!!」 大体いっつもそうだけど、東郷先輩って謝らないんだよな。 だから俺も許さない!! ところが、昼休みに東郷先輩の姿はなかった。 「今日はリュウくんお休みでーす。おめでとう!!解散!!」 な……なんてこった。 逃げたのか東郷リュウ!? それともまた殴りあってんのか? 悶々としていると、解散を告げた黒坂先輩が、思い出したように尋ねた。 「中谷、リュウとなんかあった?」 いつものニコニコ顔じゃなくて、どちらかというと心配を含んでいる。 「……べ、別に……たいしたことはないです…」 精液飲まれてケンカになりました、なんて言えるわけがない。 「ふーん……そんならいいや」 黒坂先輩はどう見ても信じてなかったけど、それ以上は聞いてこなかった。 なんかあったのかな……? ちょっと心配……だけどまぁいいや。 「夏樹、教室でお昼食べよう」 「あ、はいっ」 『もしかしたら午後から来るかも』と思ったけど、結局放課後のお迎えもなし。 夏樹と2人で帰れるのは嬉しいけど、なんかムカつくぞ東郷リュウ… 謝りに来いよ!! [*前へ][次へ#] [戻る] |