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狼たちの幸福
Asahi-3
人間が入れる鳥籠があったなら、俺は間違いなくユズを閉じ込めた。

鍵をかけて逃げられないようにするためじゃない。鍵をかけなくても、ユズが逃げようともしないことを証明するためだ。

その意味では、星野美月が鳥籠の鍵を開けにきてくれたのかもしれない。

「ユズ、美月に返事したのか?」

「……あぁ、星野さん?まだ…」

美月に告白されて動揺してるユズを家に誘うと、案外いつも通り体をねだってきた。もしかしたら何も考えてないのかもしれない。
ユズは意思薄弱で、普段から俺の言うことばっかり聞いてるから…

「どうしてそんなこと訊くの?」

ユズの不安そうな顔を見て、あることを考えた。
明らかに非常識でも、脳の奥からゾクゾクするような考えだ。

「ユズ、美月と付き合え」

「……えっ!?」

ユズがアホみたいな顔で俺を見た。

「なんでそんなこと言うの?星野さんとは付き合えないよ…」

「断らねぇと不自然だろ。お前の気にしてた噂だって消えるだろうし」

さっき西岡から聞いた噂の話を出すとユズの顔が一瞬で曇った。
噂程度でビビるわけじゃないけど、ユズはやっぱり気にしてるらしい。

それでも渋るユズに
「お前がやらないなら俺がやる」
と言ったら、ユズは泣きそうな顔になった。

「ユズはイヤなんだろ?俺が彼女作って、俺たちが付き合ってるなんて噂消してやる」

「い……イヤだよ!だって朝日…」

くだらない口実で女を抱いて嫉妬に苦しむユズを想像すると興奮したけど、今はユズを服従させたかった。
ユズは確認をするように問いかける。

「朝日はそれで良いの?俺が星野さんと…」

セックスするかもしれないって?
当然だ。

「……ユズ、俺を想いながら美月を抱け」

「あ、朝日?」

「俺に支配された体で、美月を欺いてみろよ」

俺の命令で女を抱いて、それでも俺の体欲しさにユズは必ず戻ってくる。
計り知れない優越感が手に入るだろう。

そっちがその気なら、俺だって利用してやる。

「わ、わかった!生徒会長と……星野さんと、付き合う」

バカユズ…
やっぱり俺の言うことならなんでも聞くんだな。犬みたいだ。

「でも、すぐにフラれちゃうかもしれないよ?俺、会話とか下手だし…」

「わかってるよ……その時はその時だろ」

言い伏せるようにユズを抱き寄せた。
この体で他の女を抱くんだと思うと興奮する。
それに…
女を知ったユズは男を選ぶのか、女を選ぶのか。余裕もあるけど不安も感じた。

これを面白く思うなんて、俺は頭がおかしいんだろうか。

******

「とうとう柚樹も朝日離れだな」

「はぁ?」

「付き合うことになったんだろ?生徒会長と!羨ましいよなぁ…」

ユズが美月の告白を受けたことは、翌日から早速クラスに知れ渡りはじめた。

「朝日もこれはさすがに悔しいだろ?」

西岡がからかうのをあしらっていると、ユズが何も知らずに近づいてきた。

「朝日、次の時間の宿題って…」

「ゆーずきー、星野さんともうデートした?」

西岡の言葉にユズは一瞬固まったかと思うと、遠慮がちに首を振った。

「まだ……でも、土曜日することになったみたい」

「マジか!つーかお前なんだよ?その他人事みたいな言い方」

未だ戸惑うユズの顔をじっと見つめた。
誰が“さすがに悔しい”だ…
俺はこんな気持ち良くてたまらないのに。

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あきゅろす。
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