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狼たちの幸福
Yuzuki-4
生徒会長、星野美月さんとのデートはすごく穏やかで、加速的だった。

穏やかだったのは前半、映画を観終わるまでのことだ。加速的だったのは後半で、俺は星野さんの家にまでお邪魔していた。

「上がって。家族は誰もいないから」

「あ、うん……お邪魔します」

星野さんの部屋に入ると女の子特有の甘い香りがした。
少しのドキドキと、どうなるんだろうという不安が襲う。

「すごく片付いてて綺麗だね」

「そうかな」

「うん。朝日の部屋みたい」

前日、朝日に何度も確認したことを思い出した。

本当に良いの?
『お前が浮気したんだから俺も…』なんて考えてない?
俺は本当は朝日が好きなんだからね?

朝日は全ての言葉に頷いたあとで言った。

「チャンスがあったらヤってこい。逃げんなよ?」

これはチャンス……なのか?

「柚樹くんってホント朝日くんと仲良いんだね」

「うん、親友だから」

「そういう友達想いなところも、好きだな」

「え?」

星野さんがベッドに腰かけて、意味深な視線を向けてきた。

「柚樹くん……好き」

「……あ、ありがとう」

言ったあとで「俺も好きだよ」が正解だったんだろうなと気がついた。
その代わりといっちゃなんだけど、勇気を出して星野さんの隣に座ってみる。

「柚樹くん…」

あぁ、なんだろう。

こんな美人が隣にいてドキドキする。
だけどそれより、朝日のことで頭がいっぱいだ。
朝日への罪悪感と、秘密の共犯に対するスリル感。朝日が大好きでたまらないのに、朝日の命令でこの人と体を重ねる。

考えれば考えるほど俺には複雑すぎて、頭がおかしくなりそうだった。

******

「……もしもし?」

『ユズ、今日ヒマか?』

翌日の日曜日、朝日がうちに遊びに来てくれた。
俺が昨日星野さんとデートしたことを知ってるのに、朝日はいつも通りマンガを読んでる。

と思ったら、急に朝日が「昨日、どうだった?」と尋ねた。

「映画観て……おうちに行ってきた」

「あぁ、じゃあセックスしたんだ?」

朝日はなんでもないことのようにマンガのページをめくりつつ言った。

星野さんとのセックスは、混沌としていた。
元より女の子としたこともないし、下手なんだろうと自負していたのもあるけど……何より、体と心がバラバラになったみたいだった。

それともうひとつ…
俺が返事を出した日、星野さんは「緊張しちゃう」と言っていたけどアレは嘘だったんじゃないかな。
明らかに俺より慣れていたし、どこか俺を審査しているような目が印象的だった。

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