神様の言う通り!
後編2
「お疲れ様です……あれ、成井さん」
「市早くん!」
「休憩時間ですよね?他の出し物、見て回って来なくていいんですか?」
「なんか……あんまりそんな気になれないんだぁ」
見るなら高階と見たかったけど、ずっと店番やってるしなぁ〜。
まぁここにいても、高階の接客する声と女の子の黄色い声が聞こえてきて辛いんだけど…
「……成井さん、大丈夫ですか?」
なんかもう大丈夫じゃないかもしれないっ。
高階にとって、俺ってどういう…
「成井くん、交替の時間だよー?」
「み、みみみ水沢さん!ごめん!」
もうそんな時間か!
一度脱いでしまった着ぐるみをまた手に取る。水沢さんがそれを見て準備室の中に入ってきた。
「またウサギさんになるの?」
そう言われたら、水沢さんのチャイナドレスは朝のと違う。色も変わってるし、丈だって短くなってるような…
「衣装たくさんあるから、勝手に着替えてもいいんだよ?」
「え、でも…」
「そうだ!成井くんってナース服とか似合いそう!ね?」
「……は?」
水沢さんのぶっ飛んだ発言に固まっていると、準備室にいた他のクラスメイトたちが反応した。
「出た!水沢さんの天然発言」
「でも確かに成井くんってそういうの似合いそうかもー!」
「おー1回着てみれば?」
えっ!?いやいや、確かに女の子のコスチュームはうらやましくて着てみたかったけど…
「ほらほら、成井くん!」
「えっ!?いや、ちょっ…」
水沢さんが乱雑に置いてあった衣装箱の中からナース服を取り出す。そして俺の体に合わせると、「かわいいー!」と喜んだ。
「早く着てみて!ね?」
こうなったら誰も止めてくれない。それどころか女子たちが面白がって今着てるTシャツを脱がせようとしてきたから、俺は慌ててその手を止めた。
「ま、待って!着るよ!着るから!」
怖いよー!
なんだか本当に着なくちゃこの場が収まらない気がしてきた。
仕方なく俺は素早く服を脱いで、水沢さんが持ってるナース服を受け取った。
うぅ、高階以外のクラスメイトに女装姿を見せるのは初めてだ。
恥ずかしくて死にそう…
白いワンピースに袖を通して、勇気を出して振り返る。
すると、準備室にいたクラスメイト全員の拍手が鳴り響いた。
「成井くん、似合う!」
「やべぇ、成井まじイケるな」
「……そ、そうかなぁ?」
そこまで言われるとやっぱり嬉しい。
高階も見たら喜んでくれるかな?
「他にもあるよー!ナース帽でしょ、聴診器とか…」
「襟立ってるよ!直してあげる」
「え、え、えっ」
女の子たちが急に群がってきた。
どーしよ、恥ずかしいから早く脱ぎたいんだけど…
キャーキャー言う女の子の中で身動きを取れずにいたら、急に高階が準備室に入ってきた。
「おい水沢いつまで…」
「あっ、高階くん!見てこれ!可愛くない?」
水沢さんが手招きしてナース服姿の俺を指さした。
あ、頭がついていかない。でも高階どんな反応…
「……おい、神楽」
「は、はいっ!?」
「ちょっと来い」
高階はそう言うと俺の手を引いて準備室から出ていこうとした。周りのクラスメイトもビックリして誰も止めてくれない。
「た、高階っ?待って…」
教室に連れていかれるのかと思ったら、そこも通過して高階は廊下をどんどん進んでいく。
和服に連れてかれてるナース…
周りからはどんな光景に映ってるんだろう。
「たか……榊様?ねぇ、待ってよー」
「良いから来いって」
高階に連れて来られたのは、出入りできないはずの屋上だった。
鍵がかかってるのに……と思ったら、高階はどこからか鍵を取り出して簡単に屋上のドアを開けてしまった。
「えー!?なんで?なんで鍵持ってるの?」
「人脈だよ人脈……それより!」
珍しく高階が大声をあげたから俺は肩を跳ねさせた。
もしかして、この前帰っちゃったこと怒ってるのかな?それより、さっき女の子たちに囲まれてたのを怒ってるのかもしれない。
高階の口から辛い言葉が飛び出してくる気がして、耳を塞ぎたくなった。
「な、なに…」
「なんでお前は女装してんだよ?」
「……ふぇ?」
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