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神様の言う通り!
前編4
数週間後。

「おい、コスチューム届いたぞ」

文化祭の準備は佳境に入っていて、今日はコスプレ喫茶で使う衣装が届いた。
高階と水沢さんが持ってきたダンボールにクラスのみんなが群がる。

「可愛い」とか「着たい」なんて声がたくさん聞こえてくる。俺も見に行こうかな……?

迷っていると男子の1人が嬉しそうに「榊!こんなの誰が着るんだよ」と大声をあげた。
取り出した物を覗き込むと、黒のレオタードと網タイツ。こ、これは…

「男の憧れだろ?バニーガール」

高階は自慢げに笑っている。

「いやいや、誰も着ないだろこれ」

「そーだよ榊、どうすんの?」

高階は周りの女子を見回したあと言った。

「水沢は?意外にこういうの好きだろ?」

なんてこと言うんだ高階ー!!

突然名前を出された水沢さんは顔を真っ赤にして「え、あの」とどもりだした。

「わたし、ウサギは好きだけど……ウサギになりたいわけじゃあ…」

「お前は本っ当に反論がズレてるよなぁ」

「あ、でも人参は好きです!」

「だからそこじゃねぇって。1回病院連れてってやろうか?」

2人を中心に笑いが起きた。
高階と水沢さんは、いつの間にすごく仲良しさんになってる。
水沢さんのためにバニーガールの衣装を買うなんて…
高階は変態だー!

「水沢さんってちょっと神楽に似てるよな」

「えっ!?」

慌てて振り返ると、親友の北川が立っていた。
高階とのことを知ってるから、慰めに来てくれたのかもしれない。

「似てるかなぁ…」

「天然な感じとか……でも、あんな噂気にすることないよ」

「あんな噂って?」

北川が「そんなことも知らないのか」って驚いた顔をした。

「文化祭の前日に、ミスコンやるだろ?学年一の美女とイケメンを投票で決めるやつ」

「あ、そうだね!2年生しかやらないから、今年は俺たちかぁ」

「そのミスとミスターって、かなりの確率でカップルになるんだって」

北川の話によると4、5年くらい連続でカップルになっているらしい。
すごい確率だ!きっとロイヤルストレートフラッシュくらい難しい。

「で、今年の最有力候補が…」

「高階?高階なの?」

「そう、それと…」

あ、
水沢さんか…
確かに2人とも学年一かもしれない。きっと今年のカップルはこの2人だって、周りが噂するのもわかるかも…

「でも高階は…」

「そ、そうだよな!高階は絶対そんなつもりないよ」

北川が必死でフォローしてくれたけど、やっぱりショックだった。

あんな可愛い女の子と噂になって、あの高階が喜ばないわけないもん!

高階の、高階の…

****************

「高階のバカー!!」

「お前なぁ、そういうのは本人に隠れて屋上とかで叫べよ」

「屋上って立ち入り禁止だもん……でもなんで屋上なの?」

「いや知らねぇけど……少なくとも俺の部屋で叫ぶのはやめなさい」

だって、モヤモヤするんだもん!
こんな気持ちになるなら高階の奴隷の頃の方が良かったのかな…

「ねぇねぇ、高階っ」

「なーに」

「高階は知ってる?毎年ミスコンで優勝した2人が…」

話の続きにピンときたのか、高階は急に吹き出して「今頃聞いたのかよ」と俺を嘲笑った。

「なに、気にしてんの?俺様が優勝しちゃうから?」

「まだわかんないじゃんっ」

「いやいや俺よりイケメンなんてうちの学年にいねぇだろー」

高階は絶対的な自信を持ってるみたいだ……確かにそうなんだけど!

「そんなに不安か?まぁ俺のかっこよさじゃ不安になるのもわかるけどなぁ」

「そんなんじゃ…」

「じゃあお前がミスコンで優勝すりゃいいじゃん。あ、女装すりゃ良いとこまで行けんじゃねぇ?」

高階はニヤニヤしながら俺の肩を叩いた。笑わないで、ほしかったのに…

「……もういいっ!」

涙声で叫ぶと、高階は少し焦ったように俺の頭を撫でてきた。バカにされたみたいで、余計に涙が出る…

「もう高階なんて知らないからね!もう明日から……お昼買ってきてあげないから!」

「そこかよ」

これ以上いるのが辛くて、俺は鞄を掴むと高階の家を出ていった。
少し走ってから振り返ってみたけど、高階は追いかけてきてない。

おかしい!大体のドラマだと、追っかけてくるのに…

「……でも、高階が悪いんだもん」

それだけ呟いて、ゆっくりと家まで帰った。

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