神様の言う通り!
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あの日から1週間経って、有吉くんとはよく挨拶する仲になった。
特に高階の家から駅までの道でよく会うんだー。
「あ、有吉くんおはよー」
「有内な。そろそろワザトかー?」
あの日から1週間経ったけど、有内くんの名前はいっこうに覚えられない…
いっそ有吉に改名したらどうだろう?
「成井、前から気になってたんだけど……あれから大丈夫か?」
「え?」
「男に襲われたりしてない?」
「あぁ……大丈夫だよー」
そんなこと心配されてたのか…
なんか恥ずかしいなぁ。
「でも、成井は男にモテそうだもんなぁ」
「えぇっ?そうかなぁ」
言われてみたら男に告白されたことあるし、男と付き合ってるな…
「俺も成井のこと可愛いなって思う時あるよ」
有内くんが俺の顔を覗きこむように見た。こんな冗談も言うんだ!
「あ、ありが…」
「とう」を言う前に、俺の口は有吉くんの唇で塞がれた。
俺は一瞬で頭が真っ白になってしまった。
「……え」
「ごめん、成井が可愛かったから」
有内くんが笑って俺の頭を撫でた。
俺は今、起きたことを脳内で再生し始める。
「……え、キスした!?なんで?」
「いや言っただろ。成井が可愛かったからだって」
そんな理由でキスできるの……?
いやいや、俺はムリだ!
「……俺、帰るねっ!」
「成井!」
有内くんの手を振り切って駅へ走った。
有吉くん、俺のこと好きなのかな?それとも冗談?どっちにしろショックだ…
パニックのまま電車に乗ると、携帯にメールが来た。高階だ…
《英語の宿題渡すの忘れた。明日当たるから取りに来い》
えー、今電車に乗ったところなのに…
仕方ないから次の駅で降りて反対方向の電車に乗る。
高階に「さっき有内くんにキスされた」なんて話したら怒られるかなぁ。秘密にするのもイヤだけど…
さっきまでいた駅にまた戻ってきた。
尿意を感じてトイレへ向かうと、男子トイレの中から声が聞こえてきた。
「何それ、フラれたの?俺との約束はどうなんだよ」
「だから…」
どっかで聞いたことあるような、と感じながら中に入ると、小便器の前にいたのは有吉くんだった。
「あれ、有内く…」
俺は言葉を失ってしまった。
さっきキスされた相手で気まずいから、とかじゃない。
有内くんと話していたもう一人の男の人に見覚えがあったからだ。
眉に光る銀色のピアス。
この人って…
「あ、えっ?有内くん、知り合いなの?」
有内くんは目を泳がせてる。
眉ピアスさんはあの時と同じ恐ろしい笑みで俺に言った。
「すげぇ仲良しだよ。恋の協力とかしちゃう関係」
「え……?」
眉ピアスさんの言葉に、有内くんが呆れたようにため息をついた。
「あーもう……まぁいいや。そいつの言う通りだよ。俺たち友達」
「……ど、どういうこと?」
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