神様の言う通り!
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放課後になっても神楽は来なかった。
アイツに鞄を持たせて一緒に帰るのが日常化していたから、違和感を感じる。
なんだか無性にアイツの顔が見たくなってきた。どうせ避けられてるんだったら、俺から会いに行ってやろうか?
なんだかんだ俺様から会いに行けばアイツ喜びそうだし…
神楽に会いに行こうかどうしようか考えていたら、電話が鳴った。
「もしもしっ…」
『もしもし榊?今なにしてる?』
「あ……お前か」
天宮だった。先週神楽が定期入れを渡して以来、会ってないけど…
「なんか用か?」
『いやー何してるかなって……怒んなよ!』
怒ってねぇよ!
俺はいまだに、腫れ物扱いされてるんろうか…
『この前も言ったけどさ!今度遊ぼうな!それだけ!』
「あーわかったよ……そのうち連絡するから」
『おう、待ってるからな!』
「あ……そうだ、天宮」
『何だよっ?榊!』
「お前、神楽にヒナの話しただろ?」
天宮が黙りやがった。
別に秘密にしてるつもりもねぇけど、コイツ口軽すぎだろ…
『ごめん……でも、あの子榊のこと好きなのかなぁと思って…』
「あの子?……あぁ、あの子な」
びっくりした。そういやアイツ女装してたっけ。
まぁそんなのどっちでもいいか…
「だからって、ヒナの話することねぇだろ?」
『そうだけどさ……俺はお前のこと心配してんだよ!俺だけじゃない、スミレだって…』
「あ、天宮……?」
『お前だけ、ずっとあの時のまま苦しんでるんじゃないかって……みんな心配してんだよ…』
天宮にそんなこと言われると思わなかった。
あの時のままなのは、俺だけ……?
『もしもし榊っ!?天宮が勝手にヒナの話してごめんねっ!!』
あまりの大声に思わず電話を離した。
スミレだ。仲良いなぁコイツら…
「別にいいけど……スミレ」
『何っ?』
「ヒナ……元気か?」
『……元気だよ。笑ってるよ…』
スミレの言葉は心の奥底にじんわりと響いた。
そうなのか。アイツは少しずつ前に進んでるのか…
本当、あの時のまま成長してないのは俺だけだ。
「そっか…」
『榊……?』
「いつかは、ヒナに会ってけじめつけなくちゃな」
『けじめ?』
俺はヒナに、言えなかった言葉を言わなくちゃいけない。
「さよなら」とか「ごめん」とか…
浮気されたけど、守れなかったけど、ヒナのこと好きだったとか。
まぁたぶん気まずいだろうから、こいつら二人についてきてもらおう。
そうやって俺も、あの時のことに縛られるのはもうやめにしよう…
「ごめん。俺、用事あるから切る」
『え?さかっ…』
宣言通り電話を切って、俺は駅に向かった。
俺も前に進む。その先にいるのは…
たぶん、アイツだ。
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