神様の言う通り!
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ヒナは学校に来なくなって、俺も受験勉強のために休みがちになった。さすがにヒナと同じ高校には進めない。既に親は説得していた。
「ヒナに説明しに行かなくていいのか?浮気してないってこと」
天宮にそう言われたけど、そんなことを言ったらヒナが壊れるんじゃないかって思うと言えなかった。
「俺が浮気してたってことでいいから。ヒナにもそう言っといて」
この一言から俺は高校で浮気性を演じることになる。
ホント、神楽の言う通りだ。
それから数日たつと、周りもヒナの名前を出さなくなった。明らかに俺のことを気遣っていたんだろう。
そして、そのまま俺たちは中学を卒業した。
考えてみれば、ヒナとは「さよなら」も「ごめん」も言えないままの別れだった。
今さら会って言うほどのことでもないからいいけど。
「榊、メシ食わねぇのー?」
「食うけど、購買行ってくるわー」
神楽が来ないから、久々に自分で昼飯を買いにいく羽目になった。
購買の混雑が苦手なんだよなぁ…
「高階先輩っ」
適当にパンを買って人混みを抜けると後輩らしき女に声をかけられた。
知らない顔だけど、結構かわいい。
「なに?」
「あの、彼女と別れたって本当ですか?」
彼女ってどの彼女だ。なんでお前が知ってるんだ。つーかお前は誰なんだ?
とか思いつつとりあえず頷く。
すると彼女の顔がぱぁっと輝いた。
「わたし、前から先輩のこと良いなって思ってて…」
「あぁ……じゃあ、」
付き合う?
って言いかけて、寸前で神楽のことを思い出した。
アイツはどう思うだろう。泣いたり、しねぇかな…
「高階先輩?」
「……悪いけど、今は彼女とかいらねぇから…」
気付いたらそう口に出していて、彼女は悲しそうな顔で俺の前から去っていた。
「あーあ…」
逃したよ。オレ今、自ら女を逃した。
神楽の顔が浮かんだ瞬間、ダメだって思ったんだ。
俺の中で神楽の存在は思ったより大きかったことに気付く。
あんなこと、言うんじゃなかったかな…
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