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神様の言う通り!
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「ヒナ、俺と付きあわねぇ?」

「つ、付き合う!今から?」

「……そう、今から」

俺は、落合ヒナのこういう少しボケたところが好きだった。
ヒナとはあまり仲の良い方じゃなかったし、もっと仲の良い女友達はたくさんいた。それでも、「守りたい」って思ったのはヒナだけだったんだ。

ヒナと付き合ってた期間は本当に幸せだったけど、俺には気づけなかったことがたくさんあった。
それが一年後、ああいう形になったんだと思う。



「……妊娠?」

ヒナが泣き腫らした目で俺を見た。
「榊との子だよ。どうしてくれるの?」なんて言われたら、俺も泣いたかもしれない。

でも、そんなハズなかった。
そりゃそうだ。俺は一年経ってもヒナに手を出していなかった。
大事にしたいから簡単にしたくなかったし、ヒナはそういう知識が全く無いと思っていたから。

「お前……浮気したの?」

自分でも驚くほど冷静に訊くと、ヒナはゆっくり頷いた。

「あ、そう…」

「なんで」とか「誰と」とか、全く気にならなかった。
怒りも悲しみも何もなくて、ただ「バカじゃねぇの」って思っていた。
ヒナが次の言葉を言うまで。

「榊だって浮気したじゃん…」

「……は?」

何言ってんだ、コイツ。

「俺が?浮気?」

「したじゃんかっ!!だからあたし、悔しくてっ…」

……あぁ、コイツ適当なこと言って人のせいにしたいんだ。
その時は本当にそう思った。
そして、ヒナと会ったのはこの日が最後になった。



「あのね、榊が浮気してるってデマを吹きこんだ子がいるらしいの」

数日後、スミレと天宮が家に来てこんなことを言い出した。

「デマ?……誰がそんなこと」

「噂だからわかんないの!でも、榊のこと好きな子たちの仕業じゃないのかな。ヒナと榊を別れさせたくて言ったんだと思う…」

疑ってみたりもしたけど、それがどうやら真相らしかった。
あの年中ぼーっとしてるヒナのことだ。簡単に騙されるのも頷ける気がした。

「だから……ヒナは本当に榊が浮気したって思ったんだよ…」

スミレがそう言った時、なんだか目の前が真っ暗になった気がした。

天宮とスミレはその後もいろんなことを教えてくれた。よく聞いてなかったけど浮気相手はヒナが通ってた塾の講師で大学生らしい。
「誘ったのは向こうの方らしいよ」とも言ってたけど、そんなのはどうとでも言える。

俺はその日からしばらく気分が悪くて、何度も吐いた。
裏切られた絶望感とヒナへの怒りに「俺が気付いてやれたら」って罪悪感が加わって、俺はもうどうすればいいかわからなかった。

悪いのは俺なのか?
ヒナなのか、浮気相手の塾講師なのか、ヒナに嘘を吹き込んだ女たちなのか、いろいろ考えてるうちにやっぱり俺なんじゃないかって気がしてきた。

むしろ、俺が浮気してたって答えが一番平和的だと思った。

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