神様の言う通り!
----------
床を拭き終えて部屋に戻ると、高階がコーラを用意してくれてた。
嬉しい!優しい!
「お前さぁ」
「んっ?なーに高階」
「ホント女みてぇな体してるよなぁ」
「……そうかな?」
高階は傍らに置いてある雑誌を手に取って頷いた。
「女特有の柔らかさっつーか……女とヤるより気持ちいいかも」
えぇーっ!?何それ嬉しい!
高階がこんなに褒めるなんて!
「本当にー?」
「本当だって」
「じゃあさ、じゃあさ、次の彼女は俺にしてよっ!」
高階の雑誌をめくる手がピタリと止まった。
「……は?」
「俺、高階と付き合ってみたい!」
高階は俺が冗談を言ってるのか迷ってるみたいだった。
俺は心から本気で言ってるんだけど…
「マジで言ってんのかー?神楽」
「うんっ。だって高階根は優しいし」
「“根は”ってなぁ…」
「ダメー?」
高階は雑誌を手元に置くと、しばらく黙りこんだ。
「うーん……ダメ」
「なんで?」
「だって……俺が浮気したら、お前泣くだろ?」
高階は冗談めかして笑ってる。だけど、そんなの…
「そんなの、高階が浮気しなければいい話じゃんっ」
そう言うと高階は笑うのをやめて俯いた。
「……俺は、そんな約束できねぇんだよ」
やっぱり、高階はわざと浮気してるんだ。
そんできっと、ヒナさんのことが関係してるんだよね…
「なんで、できないの?」
「そりゃあ……そんな約束、意味ねぇもん」
でも、高階はそれでいいの……?
「……高階は、ヒナさんのこと忘れられないんだね」
「え……お前、なんでヒナのこと…」
高階のこんなに動揺した顔を見るのは初めてだ。ヒナさんの名前は相当禁句だったらしい。
「でも俺は、それで高階がちゃんとした恋愛できないなんて……やだよ…」
うぅ、涙出そう。
こんなこと言うつもりじゃなかったのに…
「神楽……ヒナのこと、天宮たちから聞いたのか?」
肯定の意味で高階を見つめると、高階はため息をついて
「あっそう……まぁ、別にいいけど」
と呟く。
俺は急に悔しさが込み上げてきて、いてもたってもいられなくなった。
「もう帰る!」
立ち上がって高階の部屋を出る。階段を降りている時に、後ろから声がした。
「神楽……また明日な」
「……うん」
高階の家を出ると、ついに涙が溢れてきた。
俺は本当に、高階と付き合えたらいいなって思ったのにな…
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!