神様の言う通り!
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「……あれ?一枚足りない!!」
日曜の夕方。頼まれた通り高階の分も宿題をやっていると、おかしなことに気が付いた。
俺のプリントは5枚あるけど、高階の分はその5枚目がない。
わざとかな……いや、渡し忘れかぁ。
それって悪いのは高階だし、俺がどうこうできる問題じゃないよな。
いやでも……あっちは俺が全部やってると思ってるだろうし、一応教えてあげた方が良いのかな…
下手に高階の機嫌損ねたら、俺の秘密バラされちゃうし…
仕方なく俺は携帯を取り出して、高階に電話をかけた。連絡先交換しておいて良かったな…
『……もしもし?』
「あ、高階?成井だけど…」
『……あぁ、神楽か』
……なんか、高階の声ちょっと暗い気がする。寝起きなのかな…
事情を説明して「最後の一枚は自分でやってね」と言うと、思いもよらない返事が返ってきた。
『……取りに来い。今から』
「えっ!?高階の家まで?」
『お前は俺に逆らえない理由があるよなぁ?』
……うぅ、そんな怖い声出さなくても。
今から高階の家に行くのか、面倒だな…
『あ、お前女装して来いよ?』
「えぇ!?」
『わかったな。ちゃんと女の格好して来いよ』
それで、高階との電話は切れてしまった。
……なんか、おかしくないかな?
女装癖をバラされない為に高階の言いなりになってるのに、また女装して外出しなきゃいけないの?
それって本末転倒な気が……いや、でもバレなきゃ済む話?
どっちにしろ言う通りにしなきゃ高階にバラされるし…
散々迷った末、結局俺は女装して行くことにした。この前は白のワンピースで高階にバレちゃったから、地味な色のカーディガンにデニムのスカートを合わせた。
これなら目立たないはずだ。
俺はおそるおそる人生二度目の『女装したまま外出』を始めた。
「……着いた…」
自分で言うのもなんだけど、俺の女装って相当似合ってるんだと思う。電車乗ってる間も誰にも気付かれなかったし!!
とにかく、さっさとプリント渡して早く帰ろう。
勢いよくインターホンを押す。
だけど、高階の返事は返ってこない。
「たーかーしーなー…」
小さい声で呟いてみるけど、物音一つしない。
一刻も早く人目から逃れたいんだけど…
ドアの取っ手をひねってガチャガチャと音をたててみる。
すると玄関のドアが開いていることに気が付いた。
「……高階?」
家の中を覗いてみても、人影はない。
うわわ、これサスペンスだったら高階ぜったい死んでる。お母さんお父さんいないのかな…
「高階、入るよ…」
「……神楽?」
「きゃああぁぁあっ!?」
犯人!?犯人まだいたの?
殺されるー…
「うっせぇな……この女男」
こわごわ振り返ると、階段を降りてきた高階の姿があった。
「高階ぁ……良かったー会いたかったよー」
わーびっくりした。
殺人犯じゃなくて良かった!!
「……約束、ちゃんと守ったんだな?」
高階は俺の女装姿を嬉しそうにじろじろと見つめた。
「守ったよ……あ、早くしゅく」
だいのプリント……って言う前に、高階の姿は消えていた。
急いで見回すと階段を上ってる高階。
……自分勝手な人だなぁ。
ため息をついて、俺は高階を追い掛けた。
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