神様の言う通り!
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「絶好の球技日和だね!市早くん」
「……はい」
待ちに待っ……てはないけど、今日は球技大会。俺と市早くんは他の人より早く来て大会に使う道具を運び出していた。
「成井、市早がんばってるか?」
「あ、なっちゃん!おはよー」
体育倉庫からボールを出していると、担任のなっちゃん先生が様子を見に来てくれた。
「市早はバレーだっけ?成井はなんの競技に出るんだ?」
「サッカーだよー」
「そっかー頑張れよ。優勝したら褒めてやるからな」
「えー褒めるだけ?」
なっちゃん張り合い無いなぁ。焼き肉おごるとか言ってくれたら頑張るのに。
なっちゃんと別れて俺たちは準備を続けた。
なんとなく沈黙が寂しくなったので、北川の話を市早くんにもしてみた。
「じゃあ、北川さんが得点したらお付き合いするんですか」
「まだ考えてない……せっかく市早くんにベストアドバイスもらったんだけど」
「……僕の言ったことはお気になさらず」
市早くんは相変わらず冷たい。
準備を終えて教室に戻る前に、俺は市早くんに聞きたかったことを言ってみた。
「あのさ、市早くんは俺のこと嫌い?」
「……どうしてそんなこと聞くんですか?」
「いやなんか、反応が冷たいかなぁって思って」
市早くんはしばらく俺の目を見つめたまま静止していたかと思うと、ゆっくり首を振った。
「嫌ってなんかいません……ただ」
「ただ?」
「成井さんの言うこと、なんか面白くて……笑いをこらえていました」
面白い?俺市早くんの前でギャグとかかましたかな!?
って聞いたら、市早くんはまた首を振る。
「いえ、なんというか……天然ですよね。成井さんは」
「えっ、そうかな?」
「とても純粋な人だと思います」
“天然”はたまに言われるけど、“純粋”は初めて言われたなー。
「僕は成井さん好きですよ」
「本当に?」
「北川さんのような意味ではありませんが。僕にも想ってる人がいますので」
「えっ!?誰!?」
「……臼井さんです」
本当に誰!?臼井さんなんて、うちのクラスにいないよね…
「ね、臼井さんって誰?」
「担任の臼井夏生先生です」
「……えっ!?なっちゃん!?」
「僕の場合はただ想っているだけですが。やはり相手は教育者ですので」
そうだったんだ!
学級委員も務める真面目な市早くんが、なっちゃん先生を…
しかもなっちゃんて臼井さんっていうんだ。
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