神様の言う通り! ---------- 昔から、うちの向かいに住んでいる10歳上のハル兄ちゃん。 勉強とかサッカーのやり方とかいろいろ教えてくれたけど、ちょっと変な性格の持ち主だった。 「神楽、この服着てみてよ」 そう言っていつも差し出すのは、ワンピースやスカート。 時にはフリルのついたものもあったし、セーラー服だってあった。 小学生だった俺は何も考えずにその服を着ては、ハル兄ちゃんを喜ばせていたんだ。 いつしか『自分が女の子の服を着ると誰かが喜ぶ』ってのは俺の常識になって、ハル兄ちゃんと遊ばなくなっても女装はやめられなかった。 ひっそり楽しんでいた、一人きりの趣味だったのに… 「お前、下の名前なんつーの?」 「か、神楽…」 「神楽な。俺のことは…」 「榊でいいの?」 「いや、榊様と呼べ」 か、かなり屈辱的だな… たった一度の過ちで、こんなことになると思わなかった。 『女装したまま外出してみたい』 そんなことを思いついたのが運のつき。 まさか、クラスメイトに見られるなんて… 「……それで、何すれば良いの?高階…」 「榊様と呼べ」 えっ、本気で言ってたのか!! 「……さかきさま…」 「良し。手始めに俺の昼飯を買ってこい」 高階は俺に500円玉を無理やり握らせた。 ……そんなことでいいの? しかも代金こっち持ちじゃないんだ。 高階……優しいんだな!! 「わかった!!またお昼にね!!」 「……おう」 俺は嬉しさのあまり高階から預かった500円玉をぎゅっと握りしめた。 そして昼休み。 俺は高階との約束を守るため、友達についてきてもらってパンを買いにいった。 「なんで高階の昼飯を成井が買うんだ?」って聞かれたけど、答えられるわけない!! 「……仲良かったっけ?高階と」 「ううん……ちょっと、借りがあるっていうか、うん!!」 「……ふーん?」 あれ!?北川怪しんでる!? 俺、ごまかすの下手なのかな… 「高階!!はい、お昼」 教室に戻って高階にパンを渡す。高階の友達数人が目を丸くして俺を見た。 「何ー?榊、成井くんと仲良いのー?」 高階の隣に座ってる女の子が俺を指差す。 うわわ、なんか緊張しちゃうな。 高階、上手くごまかしてね… 「……なんか、こいつ俺に憧れてるらしいんだよな」 えぇー、すごいごまかし方だ!! 俺も見習わなくちゃ… 「成井ー本気か?」 「こんな奴に憧れてもヤリチンになるだけだぞ」 高階の周りに笑いが沸き起こる。否定しないところが高階らしい… 「えっと、うん……高階はすごいよね……じゃあ」 とりあえず高階に合わせておいて、そそくさとその場を後に……しようと思ったら、高階の友達の一人に声をかけられた。 「一緒に食わねぇの?」 「あ……うん、北川と食べるし」 「そっかー」 ちょっとドキドキしたけど、これくらいのことならへっちゃらだ。 高階に黙っててもらう為にも、毎日頑張ろう!! [*前へ][次へ#] [戻る] |