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神様の言う通り!
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別に大した特徴があるわけじゃない。

強いて言うなら、名前がちょっと変わってる。“成井神楽”っていうんだけど、神楽って呼ばれるのはあんまり好きじゃない。神って漢字が、あまりに俺とかけ離れているから。

「成井、おはよう」

「おはよー北川」

友人関係も、至って普通。多くはないけど優しい友人たちがいて、俺はとっても幸せ。

多少の秘密は抱えてるけど、高校生活には関係ないし。

とにかく俺は、この平和な『高校生活』が卒業まで続くと思っていたんだ。

今日までは。

「なーるーい」

「……なぁに?」

振り返ると、クラスメイトの高階榊がニヤニヤしながら立っていた。
そんなに仲良くないし、なんで話しかけられたんだろ?

高階は2年になって同じクラスになったんだけど、男女共に友達が多くて、しかもその友達はみんなチャラチャラしてて、なんか近寄りがたい。
っていうか高階自体たぶんチャラい。髪なんて明るいオレンジだし、ピアスだし指輪だし、なんかもういろいろチャラい。
あと浮気性って噂がある。それでも彼女が絶えないのは、それだけの魅力が高階にあるんだと思う。

高階も名前に神って入ってるけど嫌じゃないのかな。この人も珍しいよな、名前が『サカキ』って…

「つーわけだから、ちょっと廊下来い」

「え?あっ、うん!!」

うわわ、まずい。
どんなわけだったんだろ。聞いてなかったや……大丈夫かな?

教室を出て、廊下で俺は高階と向かい合った。

「えっと……何?高階…」

「これ、間違いねぇよなぁ?」

突然高階が携帯を開いて俺に画面を突き付けた。
な……なんだろ?
俺は驚きながらも画面を覗く。

その瞬間、頭が真っ白になった。

「な……んで、これ…」

写真に写っているのは、黒いベルトに白いワンピースを着てコンビニで買い物をしている人物。

どう見たって、俺だった。

「すげぇな、お前……全然違和感なかったぜ」

わぁ、嬉しい…
……なんて言ってる場合じゃない!!

「えっと、なんで、その、高階が…」

「別に?昨日ぶらぶらしてたら、偶然見かけたから」

「……そうなんだ…」

混乱して、何を言ったら良いのかわからない…
と、とりあえず……ごまかさなきゃ!!

「たっ高階、あの……別に女装癖があるわけじゃないんだよ!?昨日はたまたま……が、外出してみようと思っちゃったっていうか……いつもはっ、いつもは家でやってるだけで!!」

「……結局女装癖は認めんだな?」

あれ!?
おかしいな、本当だ…

「と、ととと、とにかく……クラスのみんなには黙っててくださいっ!!」

必死で頭を下げたけど、高階は相変わらずニヤニヤしながら「どうしよっかな」とか言ってる。
ど、どうしよう。
この秘密は、誰にも知られたくなかったのに…

「お願い……なんでもするからっ」

「……なんでも?」

背筋が凍った気がして、頭を上げてみると、高階の悪魔のような微笑み。

俺はこの時、平和な高校生活の終わりを感じたんだ。

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