1 「(うわ、最悪…)」 ぎゅうぎゅう詰めの電車の中、あと2駅で降りる場所だというのにいきなりの雨。 それも大豪雨。 こんな中歩いていくのやだなあ、なんて考えてると直ぐ降りる駅に着いた。 一緒に降りるのは大体が同じ学校の人で、そんな波に飲まれて、電車を降りた。 「(全然止んでない…)」 朝から濡れんのかーやだなー、なんて憂鬱になりつつ、折り畳み傘を出すためにカバンを漁る。 「……あれ?え、うそ」 いつも傘が入っているところには傘がなく、カバンの中全体を見ても傘は見当たらなかった。 「忘れるとか、最悪」 どうしよう、 周りを見回しても、あいにく転校3日目のあたしにそんなに知り合いがいるはずもない。(それプラス今日は先生に呼ばれて1本早い電車に乗ったから、運動部の男子がほとんどだ) 「どうしよう、止むの待とうかな、」 担任に呼ばれていたけど、担任の先生は随分緩そうな人だったから、ちょっとくらい遅れても大丈夫かもしれない。(ちゃんと理由もあるんだし、!) よし、待とう!と決めて、カバンを持った。 「止まない…」 5分、10分と待ってみるけど、雨が止む気配は全くない。むしろ、強くなっている気がする。 「あーもーなんでもっと初日から積極的に話しかけたりしなかったんだろー」 今さら、転校初日のことを悔やむ。 緊張に緊張を重ねて、友達どころかまともに会話をすることさえ出来なかった。 2日目は、初日ほど緊張は無かったけれど、自分から話しかけることが出来ず、話しかけてきてくれた女の子たちと少し会話を交わしただけだった。 そんな状況で、傘に入れて欲しいと頼めるほど仲がいい友達がいるわけもない(それに運動部の男子ばかりなのだし) 「うーそもそもなんで傘忘れたんだろー」 雨は相変わらずどしゃ降りで、雨脚は更に強くなっている。 それと比例するように、@@奈佳の後悔を表す言葉はぽつぽつとこぼれ出た。 「しょーがない、走るかぁ」 携帯で時計を確認すれば、担任と約束した時間まであと3分。 走れば5分くらいで着くはず。 濡れる覚悟を決め、カバンを肩にかける。 「ちょお待ちや、会沢さん」 「へ…?」 声をかけられて、後ろに振り向けば、同じクラスの人。(…多分) 「傘無いんやろ?」 「あー、うん。わすれちゃって」 爽やかな笑顔で、腕には包帯を巻き付けて(怪我、?)青い傘をさしている(美)少年。 「濡れてまうで?」 「うーんでも担任に呼ばれてるから」 急がないと、と伝えてカバンを雨避けに頭の上に 「女の子は体冷やしたらあかん。俺の傘に入ってき」 「え、ええ!や、いいよ!」 あまりにもさらっと普通に言うもんだからびっくりする。 「オサムちゃんやったら俺から言ったるし。女の子雨の中走らせたらそれこそ怒られてまうしな」 オサムちゃんっていうのは担任。(…多分)フレンドリーな人っぼかったからそう呼んでるんだろう 「………じゃあ、お願いします」 「おん、じゃあ行こか」 白石くんは、ナチュラルに傘の中に招き入れてくれて、一緒に学校への道を歩き出した。 [次#] |