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「会沢さんは青学から来たんやったよな?」

「うん、そうだよ。白石くん知ってるの?青学のこと」

駅を出て、5分
そんな会話をしながら歩く。

「ああ、テニスの試合でな。戦ったことあんねん」

「白石くんってテニス部なんだ、」

「おん、部長やで?」

「へえ、強いんだー」

普通の会話。
でもこの状況は普通じゃない。(あたしにとっては、だけど。)
相合傘だからどうしても肩はぶつかるものだし、なにより周りからの視線がいたい。
それは、きっとこの隣にいる白石くんがとても顔が整っているから(少ないとはいっても女子だっているのだし)
それに、中学生なんて恋に多感な時期。自分に関係無くても気になってしまうんだろう。(わたしだって自分のことでなければ、ね)

「…会沢さん?」

「えっ、あ!ご、ごめん」

「いや、ええけど。大丈夫かいな」

「うん、平気」

ホントは全然平気なんかじゃない。
こんな場面を沢山の人に見られて、友だちが出来なかったらどうしよう!
白石くんの容姿ならきっとあり得る!(あたしごときがアイドルの白石くんと相合傘だもん)

これは、今からでも脱出を試みた方がいいんじゃないだろうか。
例え見られていても、優しい優しいアイドル白石くんの気まぐれってことでまだなんとかなる気がする!

「し、白石くん!」

「ん?どないしたん?」

優しい笑顔でこっちを見てくる白石くんの笑顔はやっぱり輝いてて、すぐさま離れなきゃいけないと悟った(やっぱ視線集めてるよ―!)

「あ、と、白石くんの、肩…濡れてる、しやっぱりあたし走って」

「あかんで?」

「へ?」

言い切る前に白石くんに断られてしまった。
どうしよう逃げれる気がしないんだけど!

学校に近づくにつれ、人は多くなっていくし、比例して視線はグサグサ刺さる。
あああ!早く逃げたいよう、!
だけど白石くんの表情を見る限り逃がしてくれる気は全くないようだし、
とりあえず雨止まないかな!

「俺に遠慮なんてせえへんくてええで?せっかくクラスメイトになれたんやしな」

キラキラッ、と振り撒くような笑顔の白石くん。
学校へは後5分も歩けばついてしまう。のに、雨の強さは変わらないまま。

「う、ん。ありがとう!」

いっそ開き直ってやろうかと思うばかりだ。(折角のイケメンなんだし)

「じゃあ、俺と会沢さんはもう友達やん」

「へ?あ、うん」

少し驚いたけど、返事をすれば白石くんは アイツら悔しがるやろなー と呟いた。
悔しがる? って聞き返せば、

「クラスのやつら。会沢さんと友達になりたくてしゃーないらしいで?」

と可笑しそうに笑った。
よかった、クラスには馴染めそうだ。
そんな和んだ会話をしていたら、学校はもう見えていて、きゃあきゃあ騒ぐ女の子の量もハンパない。(和んでる場合じゃない!)

「がんばる、よ」

まわりの視線に怯えつつ、頑張る宣言をした。

「あ、雨やんだな」

白石くんの呟きが聞こえて、顔を上げればホントに雨が止んでいた。
うわ、やっと逃げられる!と笑顔になれば、校門はもう目の前。

喜んだのも束の間。ぬか喜び。

ここまで来たんやからオサムちゃんのとこまで送ってくわ と白石くんからさらに視線が痛くなる宣言をされた。




(いや、うん。友達が出来たのは嬉しいけどね!
この視線さえ無ければ!)
痛い痛い視線に、ちょっと本気で泣きそうになった。




大豪雨の中登校。学校に着いた瞬間、ムカつくくらいに晴れた
(あと10分早ければ!)

thanks 空を飛ぶ5つの方法

[*前]

あきゅろす。
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