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愛の誓い
今からおよそ四千年前に遡る話。

創主を倒し、眞魔国が生まれ、
長き混沌とした世界が、新たな兆しをを見せていた。

そんな時代の波の狭間に生まれた1つの恋。

それは尊い絆と、果てのない愛と、それから…。



愛の誓い







「眞王!」

勢いおくドアを開いて、現れた少女。

彼女は、眞王の側近かつ恋人であるフィアリスだ。

結んでいた髪をほどき、カツカツと眞王の元に歩いていく。

眞王は頬杖をついて、フィアリスを見た。

「…騒々しいな。」

「貴方、またちょっかい出したでしょう?」

遠慮なく眞王の机に腰かけて、フィアリスは眞王を睨んだ。

「なんのことだ?」

「あらそう、自覚がないのね。」

「だから、何が。」

「また、新人のメイドさんたちにまでちょっかい出して。

貴方、王の自覚あるの?」

そういうフィアリスの口調は冷淡で、怒っていると言うよりあきれているようだ。

眞王は、そんなフィアリスを見て、あぁと思いついたようににやりと笑った。

「妬いてるのか?」

「当たり前じゃない…。

ただでさえ、女の子には甘いし、何かと…。」

視線をそらしながら話すフィアリスが愛しくて、思わず背後から抱きしめた。

兵の前たちの前では見せない、眞王の前だけで見せるフィアリスの素顔。

薄く頬を染めた表情や、素直な眞王への思いを告げる唇.

それがとても眞王にとっては,うれしくて仕方がない。

――――『特別』なんだと、思い知る。

眞王の腕の中で安心したように、静かにフィアリスは目を閉じる。

そうして、いつもフィアリスは眞王を許す。

ただ、眞王に対してしか芽生えないこの感情のやり場が、眞王だけだから。

「あんまり、心配かけさせないでよね。」

「悪かった。」

「本当に、悪いと思ってる?」

「馬鹿を言うな。

お前のそんな顔を見るくらいなら…。

いや、妬いたフィアリスの顔も好きだがな。」

「……。」

眞王の言葉にフィアリスは黙り込む。

不満げに、顔をしかめた。

けれど、決して抱きしめるその腕を振り解くことはない。

長い沈黙が、二人を包んだ。

二人だけの世界、静寂の間。

不意に、フィアリスが言葉を発した。

「−…ん。」

「なんだ?」

眞王は、その声を聞き取れるように顔を近づける。

フィアリスは、か細くゆっくりと、一字一句確かめるように、もう一度呟いた。



「……好き。」

その一言が、その響きが、胸に溢れてやまない。

眞王もそっと、微笑をもらして呟く。

「俺もだ。お前を愛してる。」

同じ気持ちでいることが、こんなにも嬉しい。

囁かずにはいられない。

「お前だけだ。

俺が愛をささやくのは。」

念を押すように、耳元に息がかかるような近さでささやいた。

「…当たり前、でしょ。」

小さく愚痴るように言いながら、フィアリスは背後にいる眞王の手に自分の手を重ねた。

お互いの体温が伝わって、鼓動の速さまで伝わってきそうだった。

「…お前は?」

「私も、眞王だけよ…。」

その答えに満足したのか、眞王は正面からフィアリスを抱きなおして、口付けた。

唇を通して、愛が体中に伝わる。

―――お前しか、愛せない。

そう思えるほど、眞王はフィアリスに溺れていた。

勿論、フィアリスも同じ気持ちだった。




《唇を交わした瞬間から生まれた、永久なる愛を。》




――貴方と、


――お前と、


―――共に生きよう。












あきゅろす。
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