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B−3
「なんだ?」

「えっと、バレンタインの…チョコ。」

恐る恐る差し出してグヴェンダルを見上げると、意外にも微笑んでいた。

「そうか、すまんな。」

「え…うん。いや、グヴェンダルには編みぐるみとか教えてもらったりとかでお世話になってるからね。

日頃の感謝の気持ちを込めて、ね…。」

「そうか、そっちか…。」

しかし、グヴェンダルの沈んだ低い声は薫の耳には届かなかった。

「え?」

「いや、なんでもない。」

ゴホンッと咳払いしたグヴェンダルは、薫の頭をぽんっと元気付けるように、なでた。

「何?」

「頑張れ。」

「は?」

「じゃあな。」

唖然とした薫をおいて、グヴェンダルは自分の書斎へ戻っていってしまった。

(励まして……くれたの?)

放心状態でグヴェンダルになでてもらった頭に手を当てて、薫はようやく我を取り戻した。

それと同時に、超絶美形の彼が通路の角から薫の前に現れた。

「カオル!?」

「ぁ、ヴォルフラム。どうしたの?」

「いや、ちょっとな。」

見れば、ヴォルフラムの腕には沢山の包みやら何やらが抱えられていた。

(…モテモテだわ。)

寝相や生意気な口調はひとまずとして、容姿だけを取ればヴォルフラムはそれこそ羽が生えそうな天使そのままだ。

バレンタインでもきっとヴォルフラムに熱烈アピールをする者が続出しているのだろう。

「閣下!!ヴォルフラム閣下!!」

「まずい。来た。」

ヴォルフラムファンクラブ(仮)123の人が、仲間を引き連れて現れた。
ヴォルフラムは心底うんざりしたような顔で薫を見、腕を取って走り出した。

「え、何?」

「逃げるぞ。」

「ちょ…。ヴォルフ!!」

「すまん、今だけ協力してくれ。」

ヴォルフラムの目があまりにも必死だったので、薫はただ縦に頷くことしか出来なかった。

やがて、だいたいのヴォルフラムに熱烈アピール中の女子たちを巻いた頃、やっとヴォルフラムは走るのをやめた。

「すまなかったな。」

「ん、いいよ、別に。ヴォルフも大変だね。」

「まぁな、全くユーリが余計なことをしゃべるから…。」

それからヴォルフラムはグチグチ有利のことについてあーだこーだいいはじめた。

(これ、チョコ渡さない方がいいのかな。)

ヴォルフラムの話を聞きながらそんなことを思っていると、ふとヴォルフラムがこちらを見た。

「そういえば、お前は『ばれんたいん』とやらに参加しているのか?」

「うん……まぁ、一応。」

多少言葉を濁しながらヴォルフラムに答えると、ならしょうがないか、とヴォルフラムは一人で勝手に何か納得していた。

「それで、僕の分もあるんだろうな?」

「え?あぁ…うん。」

相手からこうもつっけんどんに要求されたのは初めてだったので、多少驚きながらも、

義理チョコを渡す

本命チョコを渡す


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