C−2
「はい。」
「ん?何?」
(わかってるくせに…。)
と思いながら、コンラッドに差し出したチョコ。
勿論義理。
「バレンタインのチョコ。義理!義理だからね!!」
「言われなくても、わかってますよ。」
「それから敬語禁止!」
「はいはい。」
コンラッドが隣でため息をついた気がしたが、いや、きっと気のせいだと薫は思い直した。
「わざわざ地球で作ってこなくても、良かったんじゃないか?」
「え…だって、やっぱり本命には…。」
そこまで言って薫は、顔を真っ赤にしてコンラッドを見た。
(ゆ、誘導尋問されたわ。)
コンラッドは薫の真っ赤になった顔を見て満足したのか、いつもの微笑を浮かべた。
「な、何よ。」
「カオルも、立派な乙女だと思って。」
「コンラッドに言われると、なんかイラッとするわね。」
「それは心外だな。俺も応援してるのに、君の恋を。」
「は?」
コンラッドがさらりとそんなことを言ってのけたので、薫は唖然としてコンラッドを見た。
(どこまで紳士なの…この人は。)
悔しいが、コンラッドのおかげで多少の勇気がわいたのもまた事実。
「ありがとう。」
今回ばかりは乙女の危機を救ってくれたと言うことで、薫も素直にお礼を述べた。
「じゃあ、ちょっと行ってくるわ。」
しかし、お礼を述べるとすぐに薫はコンラッドの前から立ち去った。
一人残されたコンラッドは、静かに薫からもらった義理チョコにキスをした。
(頑張れ、カオル.)
そんな最中、血盟城へ向かう途中、
「カオル!」
薫はまたもや、ドッキリに遭遇した。
頭上から声がしたと思えば、近くの木の上からヨザックがひょいと降りてきたのだ。
(…心臓に悪い。)
バレンタインと言う行事の真の恐ろしさを悟った瞬間である。
「あれ?隊長は?」
「……眞王廟よ。」
「そうかぁ。今日はバレンタインだもんなぁ。」
ヨザックは納得したように、しみじみと呟いた。
有利のせいか、なぜか眞魔国には『バレンタイン』と言う行事が少なからず浸透してきている。
有利と交流の深いヨザックならばなおさらだ。
「カオルは、バレンタインの為に帰ってたんだろ?」
案の定、ヨザックにはバレバレだ。
隠し通すこともないか、と思い直し薫は……
義理チョコを渡す
本命チョコを渡す
無料HPエムペ!