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村田ルート


せっかく中間考査の為にと、眞王に送ってもらったので、

大人しく試験勉強に励んだ。

しかし、しばらくしないうちにインターホンがなった。

老婆かと思い、門を開けた。

勿論、予想通り老婆もいた。

しかし、訪問者は一人ではなかった。

「おはよう。お邪魔するね。」

「ぁ、おはよう。

じゃなくてなんで村田君?」

「ん、なんとなく。」

藁にもすがる思い第二回目だ。

眞魔国に初めて行った時も、

村田に心救われた場面は決して少ないわけではない。

村田は薫の顔をのぞきこむ。

「何?」

「薫、今にも泣きそうな顔してるよ。」

村田はいつも鋭い。

大賢者だからだろうか…。

ただ、頼りになることだけはわかる。

「…そう?なんでもないって。」

「うん、でもさ、

何かありますって、顔に書いてあるようなもんだよ。」

村田はいつもの口調だが、

頑として譲らない気が汲み取れた。

「ん、大賢者サマには適わないわね。

実は今日、お見合いしなきゃいけないの。

とは言っても、勝手に叔父が組んだヤツなんだけど。」

「お見合いねぇ〜。

僕らまだ高1なのに。」

「でも女子はとりあえず結婚できる年にはなるわよ。」


「結婚したいの?」


「バカ言わないで。

したくないに決まってるじゃない!」

薫は思わず声を荒げてから、

ため息をついて肩を落とした。


「ん…眞王がこの場にいたら

君の叔父さん、今頃大変だね。」

「あはは…確かに。」

洒落にならないのが余計にこわい。

「そうだわ!

村田君、1日限定私の彼氏になってくれない?」


「ぇ。良いけど。」

意外に即答。

ノリで言ってみた薫は正直目を丸くして、

村田を見た。

「協力するってことでしょ?」

「うん、まぁ…。」

しかし、もとの距離が近すぎるせいか

少々リアルで恥ずかしい。

すでにクラスでは噂が絶えない状況なのである。

「ん…いざとなったら、眞王呼ぶし。」

村田は呑気にそう言った。

「そんな非常道具みたいな扱いして良いの?」

「良いんじゃない?

いつも迷惑かけられてるの僕たちだし。」

「確かに…。」

村田はメガネを光らせて笑った。

「でしょ?」

(ん…?何か村田君から邪な気を感じる。)

しかし、薫は曖昧に微笑んだ。

「ところで、見合いって何時から、どこでやるの?」

「え〜と、2時に迎えの車がきて、

幸村本家でやるらしいわ。」

「本家ねぇ。」

村田はちょっと考えこんだ。

「まぁ、たぶん大丈夫だと思うよ。」

再び村田から邪な気を感じた。

(あはは…なんか怖いわ)

未だかつて見たことのない村田に、冷や汗をを浮かべた。

「一応、その本家とかに行くから服とかは

私の家にあるもの貸すわ。

私の家、着物沢山あるの」

そうして、村田の着物を老婆に着付けてもらい

薫も自分で着替えた。

「村田君って和服も似合うね。」

「そう?

君は、板についてる感じだよね。」

「まぁ一応普段着だし、

着なれてるからかな。」


「これじゃあ眞王は呼べないね。」
「え?なんで?」

村田は首をかしげる薫に言った。

「君の姿、眞王に見せるの癪だから。」

「はぁ…?」

(相変わらず、鈍いなぁ。)

村田は嬉しいやら、哀しいやらため息混じりに言った。

「君が可愛い姿してるのは、

あんまり他人に見せたくないんだよ。

せっかく役得なのに勿体無いじゃない?」

村田の言葉を理解したのか、

みるみる薫の顔は赤くなっていく。

「…何いってるのよ!?」


「僕の本心を言ったまでだよ。」

「なんか昔より意地悪になってない?

大賢者サマ?」


「そうかな?」


薫は村田には適わないと、

話すのをやめて、そっぽを向いた。


「ごめんごめん。

薫があんまり可愛いから、

ついからかいたくなっちゃって…。」

慌てて村田が謝る。

「…意地悪。」

薫は小さく呟いた。


「そういえばさ、

薫って僕のこと、名前で呼ばないよね?

今日ぐらい試しに呼んでみない?」

「う…呼ばない!」

「一応、1日限定彼氏なんだけどな。」


「………。」


もともと恋愛は苦手な方だった。

その手の話題から避けるため、

学校内で下の名前で呼びあう男はいない。

ましてや、すでにクラスで噂の立っている村田なら尚更だ。

だが、しかし今回は事情が事情である。

「薫?」

しかも、ちょっと村田が楽しんでいるのだろう辺りが、

薫としては悔しい限りだ。


「……しょうがないわね。

今日だけよ!」

「じゃあ、試しに一回。」

「………え?」

意識すると余計に話せない。

目の前にいるただの友達相手に、

ここまで名前とどぎまぎするものだろうか。

緊張のあまり、握った拳が汗で滑る。

「………け、健。」

(君、凄い顔してるよ。)

そう思いながら、村田は苦笑いした。

それから散々、村田の名前を呼ぶ訓練を受けた薫だった。

本家到着後、珍しく親戚が集まっているのが

ちらほら見えた。

「あら?叔父様?」

いかにも憎々しげに薫は声をかけた。

「薫か。」

叔父を見て、薫は村田を紹介した。

「コホンッ…彼は私の彼で、

クラスメートの村田 健。

悪いけど、私に彼がいる限りお見合いは頑固拒否するわ。」

「クラスメートか。

どうせただのお友達じゃないのか?」

叔父は訝しげにそう言った。

「残念ですが、ラブラブです。」

(はぁ!?言葉を選びなさい!)


しかし薫の叫びも虚しく、

村田は目を合わせても、きょとんとしながら微笑むばかりだ。

「ラブラブね、」

バカにしたような叔父の笑み。

「そうよ!ラブラブよ。」

もうやけくそだ。


「まぁ、良い。

とりあえず顔合わせぐらいしてみたらどうだ?」

「結構です。」

しかし、本家の玄関から見慣れぬ男が現れ、

叔父の隣に立つ。

「幣原茂です。

はじめまして、薫さん」

そい言いながら、薫へ手を伸ばす。


「触らないで!」


パンッと容赦なく手を振り払う薫。

叔父はヤレヤレと肩を落とした。

「彼が今日の見合い相手の幣原茂だ。」


「あぁ、そう?

でも、残念ね。

私には健がいるのよ。」

(ぁ、自然に名前呼べた…)

軽く口元が綻ぶ。

相手は意外にも、薫を見て微笑む、


「それは良かった。

実は私にも既に心に決めた人がいるんですよ。」

「は?」


「貴方も勝手に組まれた見合いのようですね。


ならば話は早い。

今すぐ彼を連れて逃げてください。」

そうして、彼は薫を村田へ突き飛ばした。


「それはどうも。

薫、行くよ!」

「え…ちょっ…!?」


村田は薫の手をとり駆け出した。










「ん〜、なんか向こうも不本意だったみたいだね。」

村田はため息混じりにそう言った。

「…大丈夫だった?」

「あ、当たり前よ。」


薫宅の前に着き、薫は一息ついた。


「村田君、手。」

薫が指摘した。

屋敷を飛び出してから、

村田はずっと薫の手を引いていたのだ。


とても心強くて、暖かかったが、

正直恥ずかしすぎる。


「ねぇ?聞いてるの!?」

ちょっと怒りながら村田に問いかける。

「『村田君』じゃないよね?今日は…。」

「は?」

「それに『1日限定』でしょ?

さぁ今からデート行こう!」

「ちょっと、待って!」


村田が手を離すどころか、引っ張るので慌てて止めた。

「…嫌なの?」

「別に…嫌じゃないけど。」


「じゃあ、良いじゃないか!


さぁ行こう!」





…それから、着物姿で所謂デートというものをした。

見合い騒動のあとだったので

時間は二時間ほどだったが…。



――――帰り道


「服は、明日学校でかえしてくれれば良いわ。」

「そうかい?ありがとう。

…でも、残念。1日限定なんて」

「は?」


「いっそのこと、


………痛っ」

村田が言い終わるや否や、

薫の照れ隠しのなぐりが入った。


「健のバカっ!」

そう言った薫の顔は真っ赤で 

村田は正直、唖然として帰っていく

薫の後ろ姿を見ていた。

(参ったなぁ

ちゃんと最後名前で呼んでくれちゃうし…。)




―からかいたくなるほど、好きなんだ。






ムラケン腹黒さをもっと出したかった(殴

なんかヒロイン他に比べてツンデレだな。
再チャレンジ


ネタバレは此方






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